愛するものを護るため

  



「♪」
「どないしたん、シグナム?やけに嬉しそうやね」
「あ、え?…そ、そんな顔してましたか?」
「とろけきった、いう表現がぴったりなくらい」
「あう…」
はやての言葉に、シグナムは真っ赤になった
「まぁ、ヴァイス君の昇進祝いもあるやろうから気持ちはわかるけどな」
「は、はい…」
「はは、そう気負わんと、普通にしとればええやん」
「そ、そうなんですが…」
「…なのはちゃんといい、キャロといい、何でみんなこないなってしまったんやろうね?」
「…失礼ながら、主も、では?」
「あはは♪まぁ、それはええやん…とりあえず、はよ行ったげな?」
「…はい、ありがとうございます」


「ヴァイス」
「おお、待ってたぜ」
「すまない、少し遅れた」
「気にすんな、女が遅れるのは特権のようなもんだ」
「それはどうなんだ?」
「はは、まぁ、極論のような気もするけどな」
「ふふ…今日はこれで行くのか?」
そういって、シグナムが指差したのは
ヴァイスお気に入りのバイク
「ああ…大丈夫か?シグナム、こういうのは」
「問題ない…と言うか、実を言えば乗ってみたいと思っていたのだ」
「そうか、それなら問題ないな」
そういって、ヴァイスは笑顔でヘルメットを渡す

「…大丈夫か?」
「ああ…」
「しっかりつかまってろ、ちょいと荒っぽくなるかもしれねぇからな」
「…こうで、いいか?」
ぎゅっと、シグナムはヴァイスにつかまる
「ああ…じゃあ、行くぜ!」
そういって、ヴァイスはアクセルを回す
軽快なエンジン音とともに、地をすべるような感じで走り出す

「どうだ?」
「…ああ、風が心地いいな」
隊舎を出た二人は、海沿いの道を走っていた
「それはよかった、それがバイクの醍醐味でもあるからな」
「…うむ、これなら私もバイクの免許を取るか」
「お、そりゃいいな、二人でツーリングとかもいけるようになる」
「…だが、やはり必要ないな」
「え?なんで」
少し寂しそうなヴァイスに
シグナムは笑顔で
「ふふ、だってお前がこうして乗せてくれるだろう?それで十分だ」
「……はは、こりゃ一本取られた」

その後、気の向くままにバイクを走らせ
途中、商店街に立ち寄り軽くファーストフードを食べ
また、バイクを走らせて目に付いた雑貨屋に寄ったり
シグナムが似合わない、といいつつもファンシーなグッズに目を奪われたり、と
とにかく、時間を忘れ楽しんだ

そろそろ時間も、という頃合で
最後に向かったのは高級レストラン

「…大丈夫なのか?こんなところ」
「心配するな、すでに予約済みだ」
そういって、さっさと中へ
シグナムもその後を追って中へ

「いらっしゃいませ」
「予約していたヴァイス・グランセニックです」
「承っております、こちらへどうぞ」
きれいなスーツに身を包んだウェイターに案内されたのは
窓際の外がよく見える席

「すごいな…ほんとに、大丈夫なのか?」
「心配性だな、大丈夫だって」
「…うむ、愚問だったな、お前の言うことを疑うなど」
「はは、そこまでではないと思うが」
「仲のよいご夫婦ですね」
「え?」
「い、いえ、私たちはまだ…」
「おや、これは失礼。あまりに自然だったもので」
「い、いえ…」
ちょうど、食前酒を持ってきたウェイターに
夫婦と間違えられて、赤面する二人
「では、改めまして…こちら、80年物の赤ワインになります」
「え?いや、ワインは頼んでは…」
「オーナーよりの贈り物です」
「え?いいのですか」
「はい、どうやらお二人を見ていると昔を思い出す、とのことで」
しかし、と二人は遠慮していたが
副支配人が出てきて、遠慮せずお飲みください
と言われたので、それでは、とありがたくいただいた

その後、ディナーを終えた二人は
酔いを醒ますことも含め
外を散歩することに

「ふぅ…風が気持ちいいな」
「ああ…」
「…改めて、昇進おめでとう」
「はは、ありがとう」
「しかし、あれからあまり経っていないのに、すごいな」
「いやぁ、それはシグナムのおかげだしな」
「?…いや、私はなにもしていないぞ」
「まぁ、確かにそうっすけど…」
「…けど?」
「…惚れた女を護るためには、誰にも負けない強さが必要だから…」
と、ごく自然にとんでもない発言をするヴァイス
その言葉に、シグナムは顔を真っ赤にしながらも
言葉を続ける
「な、何を言っている、今でも十分強いじゃないか」
「だけど、まだ勝てないやつは多い…だから、もっと強くなりますよ
 シグナムを…護るために」
「…そうか、それは頼もしいことだな」
そういって、笑顔になるシグナム
「あ…そうだ、昇進祝いがあったんだ」
思い出したように、シグナムはひとつの箱を取り出した
「これは?」
「シルバーリングだ、お前に似合いそうなのがあったのでな」
「へぇ、それは嬉しいっす♪」
「それと、もうひとつある…目をつぶれ」
「?なんでっすか」
「い、いいから早くしろ!」
「は、はぁ…」
シグナムの剣幕に押され、ヴァイスは言われたとおりにする
「…ちゅ」
「!」
と、少ししてからほほにやわらかい感触
「…えっと」
「……い、言っておくが、ものすごく恥ずかしいんだからな!」
そういうシグナムの顔は、茹蛸のように真っ赤だった
「…ありがと♪」
「ふ、ふん…」

と、いった感じでその日は
二人とも、夜の闇に消えていった…



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あとがき
 ということで、いかがでしたでしょう
最後のとこ男女逆になってるのがどうか、とも思いますが(笑)
あ、あと夜の闇、っていうのはご想像のとおりです。(を


      
 
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