スバルとティアのドタバタ珍道中    




その日、スバルとティアはGWの休みを利用して山奥に来ていた
何でも、秘湯があるということでスバルが行かないかと提案したのだが
今現在、二人は道に迷っている…というのも

「どうしてあんたはそうお約束なボケかましてくれるのよ?!」
「だ、だって似てたから…」
「どこが?!山道の地図と世界地図、どうしたら間違えられるのよ!」
「ひ〜ん?!ごめ〜ん」
そう、秘湯への道を記した地図ではなく
世界地図を持ってきたのだ…スバルは

「ったく、これじゃどこに居るかもわかりゃしない」
「こういうとき、空飛べたらいいのにね」
そう、空を飛ぶことができれば大まかな場所を推測することができる
しかし、二人は陸士であり、いまだ飛空魔法は覚えていないのだ
「ないものねだりしても仕方ないでしょ、とりあえず動きましょ
 上手くいけば麓へいけるかもしれないし」
「余計に迷ったり、しない?」
「…そのときは、そのときよ」
「あ、あはは」
スバルは空笑い
まぁ、こういう時とる行動はとどまるか、動くか
そのどちらかしかないのだから、ティアナなら動くほうを選ぶだろう

その後、約三十分ほど動いたが
まるっきり同じような風景が続く
「ねぇ、ティア〜、疲れたよ〜」
「もう、十分前にも聞いたわよ」
「だって〜」
「大体、こんなことになったのは誰のせい?」
「う…あたしです」
「わかったらぐだぐだ言わない」
「は〜い」
さすがに自分に非があるため、文句を言いつつも
スバルはおとなしく歩く

さらに三十分が過ぎたころ
「ティア〜、そろそろ休もうよぅ」
「…そうね、そろそろ休まないとさすがに歩けなくなるわ」
一時間ほど歩くこと自体は別段二人にとってはどうということはない
しかし、場所は山奥で段差は多く、木々に囲まれているため気温も高い
さらには、もともと休息のためにきたのでたいした用意もしていないのだ
「はぁ〜、疲れた」
「…はぁ…ほんとよもう、どうして休みにまで訓練しなきゃいけないのよ」
「う…ごめん」
「もういいわよ、ただの愚痴…もう怒ってないから」
「ほんとに?」
「ほんと…あまりしつこいと何かおごらせるわよ?」
「それくらいならいいよ、ケーキセットでいい?」
「…はぁ、まったくあんたは」
冗談で言ったことでも真剣に受け答えするスバルに
ティアナは呆れつつも、自然と笑顔が浮かんできてしまう
「まぁ、とりあえず今の現状をどうにかしましょ」
「あのさ…ひとつ提案があるんだけど?」
「なに?」
「あたしが全力でティアを…」
「却下!」
スバルが言い終える前に、ティアナが制止する
「まだ最後まで言ってないんだけど…」
「言わなくてもわかるわよ…あんたがあたしを投げて、周りを見ろってことでしょ」
「すごい、ティア!よくわかったね」
「以前同じような体験させられたからねぇ…」
そう言って、ティアナはスバルを恨めしい目で見る
「あ、あの時は、その…まぁ、悪かったって」
「まったく、あの時はマジで心臓止まるかと思ったわよ」
あの時、とは二人がまだコンビを組んで間もないころ
研修生だったころにあった訓練でのことだ
いわゆる垂直跳びで、パートナーと協力して跳び上がるというものだった
そこで、スバルが力加減をまったくせずティアナはさながら弾丸のように
跳びあがってしまったのだ
「無事だったんだからいいじゃん」
「はぁ…まぁ、あんたになに言っても無駄だってのは、もう十分理解したけどね」
「あはは…」
空笑いするスバル
さすがに今までかけてきた迷惑の数を考えると
申し訳なくなってくる
「あ、そうだ!…えっと…確か…あった♪」
「?」
スバルはそう言って懐からひとつの箱を取り出す
「それは?」
「ナビゲーター、といっても周囲百km四方の状況を確認するだけだけど」
「あんた、そんなもの持ってるならさっさと出しなさいよ」
「ごめん、すっかり忘れてた」
そう言いながら、スバルはナビゲーターを起動する
「…」
「どう?なにかわかる」
「…えっとね、結構近かったみたい」
「へ?」

それから十分ほど歩いたところに目的の秘湯はあった
「こんなに近くに来てたのね」
「うん、さすがティアだね」
「なにがよ?」
「だって、ティアについてきたから着いたんだよ」
「偶然よ、適当に歩いてたら着いたの…それより、来るだけが目的じゃないでしょ」
「うん♪」

そして…

「ふぅ、なんか今までの疲れとか、全部取れるみたいね」
「んー!…はぁ、そうだね」
二人はゆっくりと温泉につかる
「それにしても、偶然にしてはできすぎよね」
「ん?なにが」
「ほら、空見てみなさいよ」
「ん?…わぁ♪」
ティアナに倣いスバルは空を見上げる
空は茜色に染まっていて、どこか幻想的な雰囲気だ
「道に迷ったことが、結果的にいい方向に転んだみたいね」
「じゃあ、よかった?」
「それとこれとは別、道に迷わなかったらもっとゆっくりできたしね」
「あう…」
スバルの言葉に、ティアナは一言で切り捨てる
「…まぁ、差し引きゼロだけどね」
「え?」
「こんないいとこなら、あれくらいの運動はかえって良かったってこと」
「…」
「そういうことよ、もう気にしてないから」
少し照れつつも、笑顔でティアナはそう言った
「…ん〜、ティア♪」
「きゃっ?!ちょっと、スバル、なによ?」
「ありがとう、ティア♪」
「だからなにがよ?もう」
「なんでも〜♪」
「…ったく、あんたって娘は」
そう言いつつも、まんざらでもないティアナだった


その後、二人は温泉でゆっくりした後帰路に着いた





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あとがき
 はい、GWというわけでこんなん書いてみました
まぁ、地図を間違えるってのベタすぎかなぁ、とも思いましたが
スバルならやるだろうと(笑)
あ、ナビゲーターってのはGPSみたいなもんです

      
 
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