エイミィ風邪を引く


  




「けほ…けほ…」
その日、エイミィは風邪を引いてしまい自室で休んでいた
「うう…まさかここまでひどくなっちゃうなんて」
「……ふぅ…だるい」
そう言ってエイミィは額に手を当てた
先ほどまで濡れタオルを乗せていたのだが、すでに熱くなってしまっていた
「……タオル……あ、もう変えなきゃだめか」
タオルを変えようと傍らに置いておいた水桶に触れるとすでにぬるくなっていた
「………だめ、動けない……」
すでに体力が限界に近いエイミィは、動くこともままならない状態だった
「はぁ……こういう時一人身は辛いねぇ……」
そう言ってエイミィは瞼を閉じた


それからどれくらい経っただろう、エイミィが目を覚ますと
「起きたか?気分はどうだ、食欲があるならおかゆくらいは作るが」
「……………」
「ん?どうしたエイミィ」
「ク、クロノ君?!」
目の前にはエイミィの上司でぶっきらぼうだがなにかと優しいクロノがいた
「ど、どうして?」
「どうしても何も、風邪を引いて休んでると聞いたからな、見舞いだ」
「………」
「そろそろタオルを変えるか」
そう言ってクロノはエイミィの額に載せていたタオルを取った
「あ…タオル、変えてくれたの?」
「ああ、どれくらい放置していたか知らないが、触ったときやけどしそうに熱かったぞ」
「あ、あはは………」
「辛ければ誰か呼んだほうがいい、こういうときに一人でいると鬱になるからな」
そう言ってクロノは濡れタオルをエイミィの額に載せた
「…………」
「どうだ?」
「うん……冷たくて気持ちいい」
「そうか…」
「……ごめんね」
「ん?なにがだ」
「いや、なんかこんなことさせちゃって」
「何を言ってる、困ったときはお互い様、それに君がいないといろいろと大変だからな」
「へぇ…私ってそんなに頼りになる?」
「まぁな、なんだかんだといって君の能力は他の局員より上だからな」
「あはは…なんか照れるね」
「まぁ、そういうことだから早く直せ」
「うん……クロノ君にあまり迷惑かけられないしね」
「別に迷惑ではないがな……何か食べたか?」
「ううん…何も食べてない」
「食欲は?」
「ある…」
「じゃあ、少し待ってろ。おかゆを作ってくる」
「作れるの?クロノ君」
「失礼な、君ほどでないにしろ普通のものは作れる」
「あはは、そうだよね、ごめん」
「まったく……」
そう言ってクロノは少し微笑んで台所へ入っていった


それから約30分後、お盆に土鍋を載せてクロノが寝室に入ってきた
「お待たせ、起きれるか?」
「うん…何とか」
そう言って起き上がろうとするエイミィにクロノは手を貸した
「ありがと…」
「ああ……」
「……ねぇ、クロノ君」
「ん?なんだ」
「えと……ひとつお願い、聞いてくれない?」
「僕にできることならいいが…」
「………食べさせて」
「……なんだって?」
「……あ〜ん、ってしてほしいな、なんて」
「……」
「だめ?…かな」
そう言ってエイミィはクロノを上目遣いで見た
風邪を引いているせいか瞳が潤んでいてクロノは顔が熱くなった
「………仕方ないな、今回だけだぞ」
「う、うん…」
「ほ、ほら、あ〜ん」
「あ、あ〜ん」
クロノがおかゆをエイミィの口元に持っていく
エイミィは控えめに口を開けてそれを含む
「んく……ん…」
「どうだ?」
「…うん、美味しい」
「そうか……」
「意外と料理上手なんだね、クロノ君って」
「君ほどではないよ…ほら、次」
「うん…」
それからゆっくりとではあるがエイミィはクロノの作ったおかゆをきれいに平らげた

「ふぅ…ご馳走様」
「ああ、とりあえず薬は飲んでおこう。どこに置いてある?」
「戸棚のところ」
「……あ、あった」
薬瓶を見つけたクロノは水と一緒にエイミィに渡した
「薬を飲んだらゆっくり休め、後でフェイトに来てもらうから着替えはそのときにな」
「うん……ありがと、クロノ君」
「ああ・・・それじゃ僕はそろそろ帰るよ」
「うん……お休み、クロノ君」
「…お休み、エイミィ」


翌日

「おっはよ〜、クロノ君♪」
「エイミィ、おはよう。風邪はもう大丈夫か?」
「うん、クロノ君のおかげでね」
「そうか、それはなによりだ」
と、そこではやてが二人の姿を見つけて駆け寄ってきた
「クロノ君、エイミィさん、おはようございます」
「おはよ、はやてちゃん」
「おはよう、はやて」
「そういえば、エイミィさん風邪ひいたって聞いたんですけど、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。クロノ君が看病してくれたから」
「へぇ、意外やね」
「…何が意外なんだ、はやて」
「だって、クロノ君て冷たいやん」
「そんなことないよ、クロノ君とても優しかったよ……ポッ」
「………」
「エイミィ、なに赤くなってるんだ」
「だって、クロノ君私が寝てるときに………」
「……クロノ君」
「?!な、なんだはやて」
よく分からないが、どうやらはやては怒っているようだ
「まさかと思うけど、一人で寝てる女性の部屋に無断ではいったんちゃうやろな?」
「いや、だって他のみんなは忙しかったし、エイミィとは家族みたいなものだし」
クロノはそう言い訳するが、なぜか背筋を冷たい汗が流れた
「……」
「……」
そしてしばらくの沈黙
先に口を開いたのははやてだった
「スケベ」
「な?!」
「ふんっ!」
そう言ってはやては背を向け歩いていった
「ちょ、ちょっと待て、はやて!誤解だ、僕は何もやましいことはしていない」
そう言ってクロノははやての後を追っていった
「う〜ん、苦労人だねぇ、クロノ君」
一人エイミィは楽しそうにそうつぶやいた


後日
クロノははやてに一日付き合うという条件で許してもらったのだった


-------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき
 というわけでエイミィが風邪を引いてクロノが看病する、というありきたりなやつです(笑)
もともとはフェイト×クロノの予定でしたがBBSのほうにクロノ×エイミィのリクがあったので
急遽エイミィに変更しました。
まぁ、実際誰でもよかったんですよね、”あ〜ん”ができれば(笑)






 
inserted by FC2 system