聖なる日 「それにしてもなんやろな?カリムが呼び出しやなんて」 そう、今はやてとシグナムはカリムのもと、つまり聖王教会へ赴く途中だ 任務がらみであれば別段珍しいわけでもないのだが… 「理由は後、とにかく来てくれ、なんてな」 「何かしらの理由があるのでしょう…それとも、主は行きたくない、とか?」 「そんなことないよ、カリムとはいろいろ話したいこともあるしな」 「なら、いいではないですか…行けばおのずとわかるんですから」 「せやけどなぁ…」 どこか納得のいかないはやて というのも、今までたいていカリムからの呼び出しは お茶をしないか、とか、レリックについての情報が…と、ちゃんと用件を言うのだ 理由も話さずただきてくれ、といわれたのは今回が初めて はやてが訝しがるのも当然だ だが、確かにシグナムの言うとおり、行ってみなければわからない だから、はやてはそれ以上口を開かなかった そして、それから数十分後、目的地である聖王教会についた 「お待ちしていました、はやてさん」 「シャッハ、お久しぶりやね」 「はい…どうぞ、カリム様が中でお待ちです」 入り口で待っていたシャッハに案内され、二人は中に 「いらっしゃい、はやて」 「うん…そいで、なんや用件は?」 「まぁまぁ、そんな急がないで…ほら、お茶も用意してあるの」 そう言って、カリムは目の前のテーブルをさす そこにはおいしそうな焼き菓子と、ほのかに甘い香りの漂う紅茶がおいてあった 「これ、新作か?」 「ええ、シャッハが新しい素材を手に入れたって、作ってくれたの」 「そら、ぜひご相伴に預からせてもらわなな♪」 こうして、うららかな午後のテータイムが始まった それからどれくらい経っただろう、気がつくとすでに空は茜色に変わっていた 「あ、もうこんな時間や、そろそろ帰らな」 「はやて、まだよ」 そう言って、腰を浮かせたはやてを止めるカリム 「せやけど、あまり長居は…」 「大丈夫よ…それに、はやてを呼んだ本当の目的はこれからなんだから♪」 「?」 笑顔のカリムにはやては?顔を浮かべていた 「ここよ」 「ここは…」 カリムにつれられてやってきたのは聖堂 いわゆる、お祈りをする神聖な場所だ 「悪いけど、私は信仰ないで?」 「ふふ、大丈夫よそういうのじゃないから」 そういいつつ、カリムは扉に手をつく 「きっと、驚くわ♪」 「?」 カリムの言葉の意味を理解しかねながらも はやては若干の期待を胸に抱いていた 理由はわからない、だがなんとなくそんな感じがしたのだ 「さ、開けるわよ」 「…うん」 はやての頷きを確認し、カリムは扉を開く…と パパパーン!! 「わわっ?!なんや?」 突然の破裂音、驚いてはやては一歩下がってしまった そして、その音がやむと予想外の言葉が聞こえてきた 「ハッピーバースティ、はやて」 「はやてちゃん、お誕生日おめでとうです♪」 「おめでとうございます、主はやて」 「おめでと、はやて♪」 「お誕生日おめでとう、はやてちゃん♪」 「…おめでとうございます、主はやて」 「おめでとうございます、はやてさん」 「みんな…」 聖堂の中にはシグナムたちや、シャッハ、ヴェロッサまで集まっていた そして、その後ろには料理の載ったテーブル、傍らにはなにやら箱が積まれていた 「お誕生日おめでとう、はやて♪」 「カリム、これは?」 「ふふ、驚いたでしょ…シグナムたちに今日がはやての誕生日だって聞いてね それなら、こっちでやったらどうかって…場所的にもしっかりしてるしね♪」 「…ありがとな」 カリムの言葉に、はやてはそう言って笑顔 そして、聖堂の中のみんなにも同じように 「みんなも、ありがとな♪」 笑顔でそう言った その後、談笑やら食事やらをして プレゼントお渡し会となった 「はやてはやて、これあたしが作ったんだ」 「へぇ、上手くできてるな、かわいい手袋や♪」 「ほんとはマフラーくらい編みたかったんだけど…」 「ふふ、十分やで、ありがとなヴィータ」 「えへへ♪」 「主はやて、これは私からです」 「ありがとなシグナム…お守りか?」 「はい、気休めに過ぎませんが少しでも無事でありますように、と」 「ふふ、うれしいわ♪」 「はい、はやてちゃん私からはこれ♪」 「ありがとシャマル…セーターか」 「はい、一所懸命編みました♪」 「…のわりに、綻びあるな」 「ええ?!ほんとですか?!」 「嘘や、ちゃんとできとるで♪」 「もぅ、はやてちゃん!」 「…主はやて、不器用なので俺からはこのくらいしか用意できませんでした」 「かわいいお人形やね♪十分うれしいで、ザフィーラ」 「僕からはこれ」 「…こういうんは受け取れません」 「おいおい、指輪だからってそういう意味じゃないよ ちょっとしたアクセサリーくらいに思ってくれればいい」 「ま、そういうことでしたら貰っておきます…ありがとうございます♪」 「いえいえ」 「私からは今回お出しした料理がプレゼント代わりと思ってください」 「うん、ありがとなシャッハ」 「私からは、これ」 「ありがと、カリム…ん?これ」 はやてが手渡されたのはロザリオ、どこにでもあるようなシンプルなもの ただ違う点は… 「私たちは生まれた日をイエスキリストと同じように 聖なる日、といっているの…で、最初の誕生日の日に 自分の名前を入れたロザリオを受け取るの」 そう言って、カリムは微笑む そう、通常のロザリオと違い、名が彫ってあるのだ 「へぇ…じゃあ、カリムも持っとるん?」 「ええ、ただ肌身離さず持ってる必要はないから 私は机の中に箱に入れてしまってあるわ」 「ふ〜ん…」 「まぁ、ちょっとしたお守り程度に思ってください」 「うん、ありがと、大切にするわ」 その後も談笑していると 時間はいい頃合になっていた 「ほなら、私らはこれで」 「泊まっていけばいいのに」 「さすがにそれはな…明日もお仕事あるし」 「そうね、残念だけど」 「せやけど、今日はほんまにありがとな楽しい一日やったわ♪」 「ううん、私も楽しかったし、お祝いすることができてよかった♪」 「…ほな、またな」 「うん、おやすみ」 カリムの言葉に、はやては笑顔を返した 帰り道、はやてはふと思った ここまで幸せでいいのだろうか、と 大切な家族に囲まれ、友には誕生日を祝ってもらえる 一生分の運を使ったのではないかとも思う だが、それはきっと誤りなのだろう 真の幸せとは、自らが幸福であることではなく 大切なものたちが、幸せだと感じることではないかと… ---------------------------------------------------------------------------------- あとがき はい、というわけではやてハッピーバースディssです まぁ、いくつか突っ込みどころもあるでしょうが…シャッハがこんなにフレンドリーか、とか(笑) あと、ロザリオあたりの話は当然ながら作ったものですんで、本気にせぬよう | ||