八神家のひな祭り


  




「ひなまつり?」
「そや、桃の節句とも言うてな、女の子の成長を願う日なんや」
「ふ〜ん?」
「まぁ、簡単に言えば女の子のためのお祭りや」
そういってはやてはヴィータの頭をなでた
「そういうわけやから、みんなも手伝ってな」
「はい、分かりました」
「確か、お雛さまというお人形を飾るんですよね」
「確か押し入れの奥のほうにあったと思うから」
「では、私が取ってきましょう」
そういってシグナムが押入れのある部屋へ入っていった
「あれ?そういえばザフィーラはどこいったんやろ?」
「念話で話しかけてみますか?」
「そやな・・」

《女の祭りなのだろう?なら男はいないほうがよいだろう》
《まぁ、確かにそうみたいですけど・・》
《案ずるな、先ほどクロノ提督とあってな、これから呑みにいく》
《そうですか、でもはやてちゃんは気にしないと思いますよ?》
《だが、女同士でなければできぬ話もあろう》
《それは・・そうですが》
《とにかく、そちらはそちらでやってくれ。こちらも好きにやらせてもらう》
《・・分かりました。ただ、あまり遅くならないでくださいね》
《心得た》

「ザフィーラはクロノ提督と一緒のようです」
「クロノくんと?」
「はい、そちらはそちらで好きにやれ、とのことです」
「そか、ほなら好き勝手やらせてもらおうか」
そういってはやてはキッチンに入っていった


「すっげー、ごちそうじゃん」
「主、少々張り切りすぎでは?」
「私もそう思います」
二人が言うのも無理はない
テーブルにはケーキ、オードブル、玉子焼き、揚げ物、その他もろもろ
ざっと数えても10品以上ある。無論すべて手作り
「せやけど、一年に一回のお祭りやもん。これくらいせな」
「まぁ、それはそうですが・・」
「これを全部私たちで片付けるのは・・・」
「余ったら冷蔵庫に入れとけばええし、ザフィーラが帰ってきたとき出してあげればええやろ?」
「なぁ、はやて、もう食べていい?」
ヴィータは待ちきれないようですでに料理に手を伸ばしている

「あ、ちょお待ちヴィータ。まずはこれ飲んでからや」
そういってはやてが取り出したのは
「甘酒、ですか」
「まぁ、定番といえばそうですね」
「はやて、”あまざけ”ってなんだ?」
「お酒や、ただものすごく甘いな♪」
そして、はやてはみんなに甘酒を配る
「まぁ、堅いことはぬき、今日はみんな好きにやってや。かんぱい!」
「かんぱい」
こうして、八神家のひな祭りという名の宴会が始まった


「・・まぁ、ある程度は予想できたことか」
「そうですね、はぁ・・・」
「ま、まぁ、二人とも気ぃ落とさんと。うちも手伝うから」
そういってはやては部屋を見渡す
「せやけど、こらまたえらく派手にやったもんやな」
「ヴィータには後できつく言っておきます」
「覚えてないと思いますけどね・・」
「ははは・・」
そう、部屋の中はいろいろなものが散乱している
原因はヴィータだ。もちろん無意味に暴れたわけではない
「でも、まさか甘酒で酔えるなんて思てなかったわ」
「私もです」
「だけど、確かにこういったもの免疫はないでしょうね、ヴィータちゃんは」
「そうなんか?」
「はい、昔はこういったものを口にする機会もありませんでしたから」
「あ、そか、ごめんな」
「いえ、主が気にすることではありません。それに今は主がいます」
「そうですよ、はやてちゃん。私たちは今幸せなんですから」
そういってシャマルははやてを抱きしめた
「・・せやね、うん。うちもみんながいてくれてすごく幸せや」
そういってはやてもシャマルを抱きしめた


その後はやてはヴィータを部屋に連れて行った
「それにしても、ヴィータは軽いな。同じ女としてへこむわ」
「んにゅ・・はやて・・」
「?寝言か」
どんな夢を見ているのか、ヴィータははやての名を呼んだ
「ふふ、かわええ寝顔やな」
「・・だめだ、はやて」
「・・は?」
「それは、だめだ・・・うにゅ・・」
「・・・何や、ものすご変な夢見てへんか?」
「は、はやて・・もう・・・・」
「・・・・」
いったいヴィータはどんな夢を見ているのだろうか
いけないとは思いつつ、はやては聞き入ってしまう
「だめだ、はやて・・・もう我慢できない」
「・・・ドキドキ」
しかし、その次に出てきた言葉にはやてはずっこけた
「そのケーキ食べさせて〜」
「?!」
「大丈夫・・1ホールくらいいける・・・」
「あ、あはは、そういうことか・・」
どうやらヴィータにとっては花より団子のようだ
「て、それはそれでええんやないか?」
「・・すぅ・・・すぅ・・」
「・・・・」
そして、しばらくの間はやてはヴィータの寝顔を見続けた


翌日

「あれ?もうしまうのか、それ」
「ああ、なんでも雛人形をしまうのが遅いと嫁ぐのが遅くなるそうだ」
「嫁ぐ?」
「結婚するって言う意味ですよ」
不思議顔のヴィータにシャマルはそう説明した
「じゃあ、はやて他のやつのところに行くのか?!」
「いったい何の話をしとるん?」
三人の話が気になったのかはやてが尋ねてきた
「あ、はやて、どこにも行かないよね?ずっと一緒にいてくれるよね?」
「?当たり前やろ、何でそんなこと聞くん?」
「だって、はやてが嫁ぐって、シグナムが」
そういってヴィータは雛人形を片付けているシグナムを見る
「ちょっと待て、ヴィータ。私は主が嫁ぐなどと一言も言ってはいないぞ」
「そうだったか?」
「そうだ。まったく・・」
シグナムはそういって片付けに戻った


その後ことの経緯を聞いたはやてはヴィータに説明した
「あのな、それは迷信いうか言い伝えみたいなもんなんよ」
「迷信?」
「せや、昔の人がお雛様を早く片さんとお嫁にいけんようなるって言うたんや」
「ふ〜ん」
「そやから、心配せんでええんよ。それに倣ってやってるだけやから、別に嫁ぐとかやないし」
「ホントか?」
「うん。それにそうなってもヴィータやみんなと別れるつもりはないから」
そういってはやてはヴィータを抱きしめた
「はやて・・・」
「目に見えんもんやから、信じれんかも知れへんけど、うちは絶対みんなとずっと一緒にいるからな」
「うん、信じる。はやての言うことだもん」
「ありがとな、ヴィータ」



ちなみに・・・・
「う〜ん、う〜ん・・・」
「もう、ザフィーラとは体格違うんだから呑み比べなんて・・」
「・・男として、引くわけには・・・」
「はいはい、おとなしく寝てようね」





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あとがき
 はい、というわけでひな祭りssです。
今回は八神家の面々ということで書きましたが、なんかひな祭りっぽくないですね
まぁ、縁のない行事ですし・・・
そういえば素朴な疑問ですが何で雛人形を片付けるのが遅れると嫁に行くのが遅くなるんでしょうね?



 
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