星にかける願い…

  


その日、機動六課のオフィスにひとつの荷物が届いた
かなり大きく、軽く3メートルはありそうだ
「間に合ってよかったわ」
「はやてちゃん、それなに?」
「なのはちゃん、いやな、もうすぐ七夕やからね」
「ああ、そっか」
七夕、という言葉でなのははすぐに荷物が何かわかった
「そっか、もうそんな時期なんだ」
「うん、それに今年はいろんな娘らがおるからな、にぎやかになるで♪」
「はは、それは楽しみだね♪」

「七夕パーティ?」
次の日、なのはは機動六課フォワードメンバーを集め、七夕パーティをすることを話した
ちなみに、ヴィヴィオはしっかりなのはにくっついていた
「うん、はやてちゃんがおっきな笹つきの竹を手配してくれてたみたいで
 それならみんなで、ってことになったの♪」
「そっか、もうそんな時期になってたんだね」
「確かに、最近めまぐるしかったからな、すっかり忘れていた」
「ま、あたしはもうガキじゃねぇから願い事なんて書かねぇけどな」
「だめだよ、ヴィータちゃん。それこそが七夕の醍醐味なんだから」
「ちぇっ…わーったよ」
「七夕なんて子供のとき以来ですよ♪」
「あのさ、私たちは七夕っての知らないんだけど?」
ティアナの言葉にエリオとキャロもうなずく
当然ながら、ヴィヴィオも意味がわからずはてな顔だ
「あ、そっかみんなはまだだったね」
「七夕は短冊に願い事を書いて、笹につるすの
 そうしたら願いことが叶うって言われてるの」
「それってほんとなんですか?」
「さぁな…ただ、七夕にはもっと重要な意味があるのだ」
「重要な意味?」
シグナムの言葉に、七夕を知らない面々は興味津々だ
そして、なのはが静かに話し出す
「彦星と織姫っていう二人がいてね、この二人は互いに愛し合ってたんだけど
 身分の違いから、二人は離れ離れになっちゃうの
 さらに、二度と会えないようにって天の川という大きな川を二人の間に作ったの
 それでも、二人は互いに見えないとわかっていても川の向こう側をずっと見てた
 で、このままじゃあまりにかわいそうだから、って一年に一度その日だけ川に
 橋を渡して会えるようにしたの…それが7月7日、七夕なのよ♪」
「…」
「なんか、すごいですね」
「ちょっと、ロマンチックかも♪」
「?よくわかんない」
「ヴィヴィオ、今はお願い事を短冊に書いて笹につるす
 って、ことだけ覚えればいいよ」
「うん、わかった♪」
「はいはい、準備できたかな?」
と、ちょうど短冊を持ってはやてが部屋に入ってきた

「ほなら、それぞれ短冊に願い事書いてな…あ、一人ひとつまでやで」
「どうしてですか?」
「決まっとるやん、欲張っていっぱい書いても叶うはずないやろ?
 せやから、本当にかなえたい願い事だけ書くんや」
はやての言葉に、ティアナはそれもそうかと納得して筆をとる
ほかの面々もなにを書くか真剣に悩んでいるようだ

「ねぇ、ティア。なに書くの?」
「ちょ、スバルなに見てんのよ!」
「いいじゃん、へるもんじゃなし♪」
「どっかのおっさんか、あんたは?!」
「私のも見せるから、ねぇティア〜」
「ったくあんたは…ほら」
「やった♪…なになに…執務官になれますように
 …ティア、もうちょっと考えようよ」
「うっさいわね…ならあんたはちゃんとしてるんでしょうね!」
そう言って、乱暴にティアはスバルの短冊を奪い取る
「なのはさんのように強くなれますように…なによ、人の事言えないじゃないの」
「あはは、まぁね〜♪」

「エリオ君、なんて書く?」
「う〜ん、いろいろあるんだけど…どれにしようか迷って」
「そうなんだ…でも、変だよね必ず叶う、ってわけでもないのに」
「確かに、ただのおまじないみたいだけど…でも、なんかいいよね、こういうの」
「うん、それは私も思う」
「そうだ…よし、書けた」
「なんて書いたの?」
「だ、だめだよ、見せるようなもんじゃないし」
「え〜?いいでしょ、ね♪」
「ちょ、キャロ?!」
「えいっ、取った♪…えっと…みんなが幸せになれますように」
「…だから見せたくなかったのに」
「いいことだよ…それにね、ほら」
「あ…」
「えへへ、一緒だね♪」
そう言って笑うキャロの手にある短冊にはエリオと同じお願いが書いてあった

「フェイトちゃんはなんて書くん?」
「んっと…これ」
「なになに…エリオとキャロが幸せになれますように…フェイトちゃんらしいな♪」
「そういうはやては?」
「うちも似たようなもんやね…ほら」
「家族仲良く暮らせますように…ふふ、確かに♪」

「ヴィータ、お前はなんて書くんだ?」
「うっせぇな、いいだろ別に」
「ふ…そういわれると余計に見たくなるんだよな」
「…性格悪くなってねぇか、シグナム」
「素直に見せんお前が悪い…そら」
「だっ?!…こら、返せばか!」
「なになに…なのはが笑顔でいられますように…ふふ、いじらしいじゃないか」
「…うっせ」
「まぁ、代わりといってはなんだが私のも見せてやろう」
「いらねぇよ…どうせ、もっと強くなりたい、とかそんなとこだろ?」
「ぐっ…なぜわかる」
「…誰でもわかると思うぞ」

「う〜ん、う〜ん…」
「ヴィヴィオ、そんなに考え込まないでも…」
「だって、ひとつなんでしょ?迷うよ」
「まぁ、そうかもしれないけど…ヴィヴィオが今一番したいこと、でもいいんだよ」
「したいこと?」
「うん…お願い事って結構そういうものだよ、それにひとつにしぼったからって
 ほかのお願い事が叶わないわけじゃないしね」
「…じゃあ、これ…」
そう言って、ヴィヴィオは願い事を短冊に書く…

“なのはママとずっといっしょにいられますように”

「えへへ〜♪」
「ヴィヴィオ…」
「ずっといっしょにいてね、なのはママ♪」
「…うん、いっしょにいるよ…ずっと」
そう言うなのはの瞳には小さなしずくが光っていた


その後、それぞれの願い事を書いた短冊を笹につるし
七夕パーティが始まった
無礼講、ということではやてがお酒を持ってきたおかげで
とんでもないパーティになったのは…また、別のお話

パーティも終わり、それぞれが部屋へ帰った後
ヴィヴィオを寝かしつけたなのはは外に出ていた

「ふぅ…いい風」
夏の夜風は心地よい涼しさで、なのはは目を細める
そして空を見上げる…今日は快晴のため星がきれいに見える
「ずっと一緒…か」
なにはともなく呟く
「ほんとに、ずっと一緒にいられるのかな」
考えるのはヴィヴィオのこと
彼女の生まれはフェイトと同じ特殊なもの
だが、フェイトと違いわからない事だらけなのだ
彼女はなぜ生まれたのか、なぜレリックを持っていたか
そして…理由
「…なんで、ヴィヴィオは逃げてきたの?逃げてきたとすれば、なにから?」
おそらく、Dr.スカリエッティから…だが、そうすればなぜ?
いったい彼は、なにをしようとしているのか…
「わからない事だらけだなぁ…」
そう言って、なのははため息をつく
「…でも、護ることは変わらない…何があっても」

これから何があろうと、ヴィヴィオは護ろう
幼く、頼るもののない彼女を
そして願う、叶うならば…

彼女に、幸せな時間を…と


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あとがき
  はい、というわけで七夕です♪
まぁ、パーティ中の話も書こうかなぁ、と最初は思ってたんですが
そうするとR-15になりそうだったんでやめました(笑)



      
 
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