この気持ちはもしかして…?

  

「…はぁ」
その日、ティアナは演習場で自主訓練を行っていた
だが、休憩を取ったとたん
集中が途切れたのか、ため息を吐いてしまった
「…ふぅ」
「なんだ、やけにけだるそうだな」
「え?」
声のしたほうを向くと、ヴァイスが立っていた
「ヴァイス陸曹、どうしたんですか?」
「そりゃこっちのセリフだな、どうした、ため息なんて吐いて」
「別になんでもないです」
「なんでもないやつがそんな顔するかよ」
「うるさいですね、ほっといてください」
ティアナはそう言ってそっぽを向く
「あらら、嫌われたもんだな」
しかし、そんなことなど気にもしない感じで
ヴァイスは話しかける
「フォワードにとって迷いは危険だぜ?その瞬間狙い撃ちされちまう」
「…いつも思ってましたけど」
「ん?」
「ヴァイス陸曹って軽薄ですよね」
「…えらい率直だこと」
「だって、いつもへらへらしてるし、人に余計なこと言ってくるし…今だって」
「少なくとも、余計なことは言ってねぇと思うけど?」
「どうせ、ヴァイス陸曹には分かりませんよ、私の気持ちなんて」
「…」
塞ぎこんでる、というか何か諦めとも取れるティアナの様子に
ヴァイスは真剣な言葉を投げかける
「焦っても、なにもならないぜ」
「え?」
「急いては事を仕損じる、って言葉もある…ある程度余裕を持って行動するのがいいって事だ」
「そんな、簡単に…」
「…まぁ、今すぐにってわけでもねぇけどよ…俺でよければ愚痴くらいは聞いてやるしな」
「ヴァイス陸曹…」
「おっと、そろそろストームレイダーのやつのメンテの時間だな…そいじゃあな」
そう言って、ヴァイスは手を振りながら去っていった

「ここね…」
その後、少し気になったティアナは
ヘリポートへ来ていた
「えっと、勝手に入ってもいいのかな?」
入ろうかどうか迷っていると、中から怒鳴り声が聞こえてきた
「何やってる!そんなんじゃ、機体が傷つくだろ、もっと丁寧にやれ!!」
怒鳴り声を上げたのはヴァィスだった
「いいか、いくら強力な魔法を使おうと
 人であることに変わりはない、疲れもするし、不調な時だってある
 そんなやつらを安全に運ぶのが、俺らの仕事だ
 そのためにも、機体に不備があったらだめなんだ、分かったか!」
「はい!」
ヴァイスの言葉に、整備士たちはうなずく
そして、すぐに作業に戻る
「何か変なとこがあったらどんなことだろうと報告しろ」
「すいません、ここなんですが」
「ん?…ああ、ケーブルがちと緩んでるな…一つ上のケーブルに変えて
 少し強めに接続しとけ」
「はい」
「すいません、機器のチェックで…」
「ああ…そんなに使ってねぇが痛んでるな…よし、総入れ替えだ
 少しでも傷のあるやつは全部とっかえろ」
「了解です」
と、いった感じで次々とヴァイスは問題を解決していく
「……」
当然、普段とは違うヴァイスに、ティアナは見入ってしまう
と、ちょうど一区切りついたのか、ヴァイスがティアナの姿を見つけ駆け寄る
「よぉ、どうした?」
「あ、いえ…ちょっと、気になったので」
「もしかして惚れたか?参ったなぁ♪」
「いえ、天変地異があってもありえませんから」
「…そこまでキッパリ言わなくてもいいじゃねぇか、冗談なんだし」
そう言ってふてくされるヴァイスだが、さほど気にしていないのか
すぐに話を続ける
「…で、何か用でもあったのか?」
「あ、えと、整備の様子、見てみたかったので」
「物好きだなぁ、こんなん見ても面白くもなんともないぜ?」
「そんなことないです、バイクに乗る関係上、こういうのも経験してますし」
「そっか、まぁ言われてみりゃそうだわな」
ティアナの言葉に当然だな、という感じで納得するヴァイス
「それに、ヴァイス陸曹の意外な一面も見れましたし」
「意外ってのは心外だな、オレはいつもこうだぜ」
「…知ってます?女子局員がヴァイス陸曹の事”軽薄な女たらし”っていってること」
「は?!なんだそりゃ、自慢じゃねぇが今まで女に手を出したことないぞ」
「え?彼女とかは…」
「いるわけねぇって、大体互いに好きあってなきゃ意味ねぇだろう」
「へぇ…」
意外、とティアナは思った
まぁ、普段あまりシャンとしてないから、自分も同じような目で見ていたのだが
少し考えを改めたほうがいいかもしれない
「それに、今はストームレイダーがいるしな♪」
「は?」
「あいつのフォルムは完璧だぜ、積載量とかも半端ねぇし
 いやぁ、あいつに乗れると思うと心が躍るねぇ♪」
「…」
前言撤回…どうやらただの”変態”だったようだ

その後も、ティアナは暇をみつけてはヘリポートのほうへ足を運んだ
そしてヴァイスと話すたび、ティアナは何か懐かしいような
嬉しいような、なんだか不思議な感覚を感じていた

「…なんだろ、この心のもやもやしたの」
いつもどおり、ヴァイスと話をして自室に戻る途中
ティアナはその不思議な感覚に首をかしげていた
「すっきりしないというか、なんと言うか…でも、嫌、じゃないのよね」
そう、なにやらもやもやとしてはいるが、別に嫌というわけではなく
むしろ、心地いい…まるで、暖かい毛布にくるまれているような
「…ほんと、なんなんだろ」

「ふっ!…はっ!…せぃやっ!!」
いつものように自主練をするティアナ
しかし、心なしかいつもの鋭さは見受けられない
まるで心ここにあらず、な状態だ
「ふっ!…せい!…はぁっ!…?!」
「あぶねぇ!!」
そして、そんな状態であれば当然集中は途切れる
ティアナは足をもつれさせ転倒しそうになる
しかし、突然出てきた影に抱きかかえられ、身体を打ち付けることはなかった
「…ふぅ、間に合った」
「ヴァ、ヴァイス陸曹?!」
「よお、危なかったな、怪我はねぇか?」
「は、はい…でも、あの…」
「ん?」
なにやら顔を赤くしてもじもじとするティアナ
不覚にも、ヴァイスはそんなティアナをかわいいと思った
「…大丈夫ですから、おろしてください」
「…あ、そうか、悪い」
その言葉に、ヴァイスは今までティアナを抱きしめていたことに気づく
「えと…ありがとうございます」
「別に、たまたま通りかかっただけだ」
そう言って、ヴァイスはそっぽを向く
しかし、心なしか顔が赤いような気もする
「と、とにかくだ、何か心配事があれば聞くぞ?」
「…あ!」
「ん?どうした」
(そっか…兄さんだ)
そのとき、ティアナは今まで感じていた不思議な感覚の正体に気づく
似ているのだ…兄に
普段大して威厳があるわけじゃない、だが気がつくといつも側にいて
守ってくれる…ヴァイスも、そういう人間だったのだ
「…ふふ♪そっか」
「おいおい、気持ち悪いな、いきなり笑うな」
「楽しいときは笑う、そうでしょ♪」
「…ったく」
満面の笑顔をうかべるティアナ
そんなティアナを、悪態を吐きながらも
微笑ましく見守るヴァイス
そんな、楽しい時間…

(でも、ちょっと残念かな?…てっきり”アレ”だと思ったんだけど)



このとき、ティアナは気づいていなかった
ヴァイスに対して感じた暖かさが、それだけではなかったことを
兄妹としての”好意”ではなく…

一人の男性への”好意”であることに――




---------------------------------------------------------------------------------
あとがき
 はい、まぁいろいろあるでしょうがそこはスルーで(笑)
とりあえず、第10話見て思いついたネタです
この二人絶対怪しい…というか、私の中ではできてます!ええ、もう最後まで…
というわけで、今後はこのCP推してきますんでよろ♪

      
 
inserted by FC2 system