そこから見える景色


   




その日、休みを取ったヴァイスとシグナムは
デートへと出掛けた、行き先は定番中の定番…遊園地

「ふむ、これが遊園地と言うものか」
「あれ?もしかして、初めて」
「ん…まぁ、な…大体、私のようなものが来るような所ではないだろう」
「いやいや、子供のとき…と、違う違う…」
「別に気にするな」
「ま、そこはそれってことで…というか、はやてさんたちとは?」
「ヴィータは行きたいと言っているんだがな、いかんせん仕事の面で」
「なる…ま、誰が言ったか遊園地は夢の国、似合うとかそんなん関係ないぜ」
「ふむ…まぁ、そうだな…第一、デート、なのだから、気にせずともいい、のだよな?」
と、頬を染めつつ聞いてくるシグナム
「そうそう…あと、そういうのはあんましないでもらえるとありがたいっす」
「?どういうことだ」
「…我慢効かなくなる、ってことっす」
「…!…ばか」

「さて、そんじゃ最初はなに乗る?」
「そうだな…」
「あ、わかってると思うけど、フリーパスだからどの乗り物もOKだぜ」
「それが逆に迷う原因のような気もするが…よし、ならアレにしようか」
「アレ、か」

「…なんか、どきどきするな」
「これも、ひとつの醍醐味だ」
「…飛ばされたり、しないだろうな?」
「…」
「おい?!なぜ黙る!」
「冗談だって、ジェットコースターは遊園地でも一番点検が厳しいんだ
 そんなことにはならないさ…滅多にな」
「おい?!今、聞き捨て…お、おおぉぉぉ?!」
「ひゃっはー♪」
「う、くぅぅ?!」
「イエー♪」
「わ…きゃぁぁぁぁ?!」
「爽快だー♪」
「た、たす…わきゃぁぁ?!」
「うおぉぉ♪」

「…」
「いやぁ、楽しかったな♪」
「…に、二度と乗るものか」
「意外だな、アレがだめってのは」
「意外、だと?あんなもの娯楽でもなんでもない!ただの拷問だ!」
「まぁ…ヘルゲートコースターだしな」
「…道理で、5連続宙返りとか、70度傾斜とか、有り得ないことばかりなわけだ」
「ま、俺としてはシグナムの可愛い悲鳴が聞けたから、それだけで満足だが♪」
「?!」
「そういう意味じゃ、もっかい乗ってみたいな♪」
「断固断る!!」

「んじゃ、次はどれにする?」
「先ほどのようなもの以外だ」
「…かなり参った?」
「…う、うむ」
「はは…んじゃ、定番いきますか♪」
「?」

「…お化け、屋敷?」
「ま、ちゃちな作り物だけどな」
「…」
「どうした?」
「?!べ、別に怖くなどないぞ!本当だ!!」
「…んじゃ、行くか」
「え゛?」
「怖くない、んだよな?」
「も、もももちろんだ」
「んじゃ行くぞ♪」

「ひ?!」
「おお、結構凝ってるな」
「そ、そそそうだな」
「でも、ありきたりなのもあるな…ほら」
「え?」
「う〜ら〜め〜し〜や〜…」
「おお、なかなか」
「?!!!!!」
「ん?シグナム」
「……!な、なんだ?」
「いや、大丈夫か?」
「…べ、別に、これしき」
「無理しないほうがいいぞ?」
「む、無理などしていない!見ていろ」
「あ、下手に進むと」
バキッ!!
「…へ?」
わらわらわらわら…
「て、てててて手〜?!!!」
「へぇ、こういうのもあるのか」

「わきゃあぁぁぁ?!く、くく首が!」
「う〜ん、思ったよりすごいな」

「きゃあぁぁぁ?!く、首?!首に何か!!」
「と思えば、古典的なものまで…」

「ひぃぃぃ?!あ、あああ足が?!!」
「定番だな…でも、幽霊ってお化けなのか?」


「はぁ、はぁ…」
「いやぁ、なかなか楽しめた♪」
「…」
「…苦手ならそういえばいいのに」
「ぐ…」
「しかし、意外だな。シグナムってこういうの大丈夫だと思ってたけど」
「別に化け物など怖くはない…だが、お化けは別だ」
「?どういことだ」
「お化けは斬れんではないか!!」
「…」
「実体されあれば、恐れることなど皆無だ」
「…くく」
「?どうした、ヴァイス」
「あっははは♪」
「な?!なぜ笑う」
「いや、だって…可愛すぎて♪」
「?!!!」
「いやぁ、いろんなシグナムを見れて、最高だ♪」
「…馬鹿者が」

「さて、時間も頃合だし、昼飯にするか」
「そうだな」
「んじゃ、なに食べる?一通りは揃ってるみたいだが」
「いや、その、な…実は、作ってきたんだ」
「?なにを」
「その…弁当を、だ」
「…もしかしなくても、手作り?」
「ああ…だが、期待はするなよ?こんなこと、経験ないのだから」
「いやいや、無理無理!彼女の手作り弁当と聞いて、喜ばない男はいないって♪」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが…ほんとに、文句は言うなよ?」
「大丈夫だって♪んじゃ、お弁当タイムといこうぜ♪」

「…」
「だから言っただろう、期待はするなと」
「いや、まぁ…これは、これで」
「ふ、気にするな…所詮、私ではこのような無骨なものしか作れんのだ」
「いやいや、見た目なんて食っちまえば同じだって」
「だが、期待外れなのは否めんだろう?」
「だから、そう卑下すんなって…あむ!」
「あ!」
「んむんむ…美味いじゃん」
「世辞はいらんぞ」
「いやいや…あむ、ん…うん、美味い♪」
「…本当か?」
「ああ、形はどうあれ、味がいいんだから問題ないさ♪」
「…そうか、ならよかった♪」
「はは…ほら、シグナムも食べろよ」
「そうだな…だが、その前に」
「ん?」
「その、だな…あ、あ〜ん」
「…へ?」
「…早くしろ、恥ずかしいんだぞ」
「あ、ああ…あむ」
「ど、どうだ?」
「んく…ああ、美味い」
「…そうか♪」
「…なんか、恥ずかしいけど、嬉しいな♪」
「…ああ」

「さて、そろそろ時間もいいし、最後のアトラクション行くか」
「もうそんな時間か…しかし、この時間に相応しいアトラクションとは?」
「行けばわかるさ」

「おお、結構高いところまで行くんだな」
「ああ、そこが観覧車たる所以だな」
「しかし、この時間がいいと言うのは?」
「もうちょいしたらわかるさ」
「?」

「そろそろか」
「もう少しと言いつつ、結構じかんが経ったが?」
「はは、観覧車はそういうもんだからな…ほら、外見てみろよ」
「?…おお」
「どうだ、綺麗だろ?」
「うむ、確かにこの時間ではないと見れない景色だな」
「だろう?特に、ここからの夕焼けは絶景だって、もっぱらの評判だ」
「ああ…これは素晴らしい」
「はは、そこまで喜んでもらえれば、つれてきた甲斐もあるってものだ」
「ああ、最後にこのようなものを見れるとは思ってもいなかった♪」
「それはよかった♪」

「しかし、観覧車とは時間の掛かるものだな」
「そうか?」
「ああ、かれこれ10分は経過しているが、まだ頂上付近だ」
「ま、ゆっくり景色を楽しむ、ってのがひとつの醍醐味だし」
「ひとつ、ということは他にもあるのか?」
「そうだな…こういうことのために、な♪」
「ん?!!」
「ん…つまり、恋人同士のため、って事♪」
「…いきなりとは、卑怯だ」
「そうか?」
「ああ、だから…ん♪」
「!…ん」
「ん…はぁ…お返しだ♪」
「…はは、負けず嫌いなことで」
「ふん、今さらだろう?」
「違いない♪」

「…今日のこと感謝する」
「ん?」
「誘ってくれたことだ…おかげで、楽しい時間を過ごすことができた」
「はは、それはお互い様さ、俺も楽しい時間を過ごさせてもらったからな」
「ああ…まぁ、言いたかっただけだ、気にするな」
「そうか…」
「ああ…」
「…」
「…」
「…あのさ、シグナム」
「ん?なんだ」
「その、さ…この後、時間ってあるか?」
「まぁ、遅くなるかもしれないとは言ってあるからな、大丈夫だが」
「んじゃさ…予約、してあるんだよな、実は」
「予約?」
「ああ…部屋の、な」
「…!…まさか、それは」
「…まぁ、ご想像のとおりだと」
「…本気か?」
「ああ…別に、無理にとは言わないぜ…」
「…ふ、お前らしくもない」
「こういうときは、どんな男でもこうなると思うぜ?」
「そうか…だが、私に拒む理由があると?」
「それは、まぁ…気乗りしない、とかさ」
「ふ、そうだな…だが、いいものを見せてもらったしな、気分もいい」
「…じゃあ」
「…ちゃんと、リードしろよ?」
「ああ、そんなの当然だ♪」
「…ヴァイス」
「…シグナム」
「ん♪」
「ん…」
「…愛している、ヴァイス♪」
「ああ、俺もだシグナム♪」


そして、二人は腕を組みながら夜の帳が降りる町を歩いていくのだった…


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あとがき
 はい、ということでいかがでしたでしょうか
今回は、ちょっとナレーションは控えめに
本当にデートしているような感じにしました。
…まぁ、手抜きと言われちゃそうかもしれませんが(を
ま、こんなのもたまにはいいのではないかと♪
      

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