「はぁ…はぁ…」
その日、ティアナは一人自主訓練していた
「…まだ…こんなんじゃだめ」
目の前にはうず高く積まれた木々
すべて訓練用ターゲットだったものだ
「もっと…もっと正確に鋭く!」
そう言って再び立ち上がろうとしたティアナに呼びかける声
「ティア…」
「……何か用?スバル」
「ねぇ、こんなところで一人でやらないで、みんなと訓練しよ?そのほうが何かと…」
「そのほうが効率は悪くなるわ」
スバルの言葉にティアナはそう言ってそっぽを向く
「そんなことないよ、みんなでやったほうがいろいろ気づくこととかあるし」
「それ以前に…仲間を撃つようなやつと一緒じゃ気も休まらないでしょ」
「!」
ティアナの言葉に、スバルは息を呑む
「…解ったらさっさといきなさい…大丈夫よ、勝手なことはしないから」
そう言って、ティアナはさらに奥へと進んでいった

「なにやってんのかなあたし…」
思い起こすのは前回の出撃のときのこと…

『?!』
『あ!』
『てめぇどういうつもりだ!!!』
『ヴィ、ヴィータ副隊長、これもコンビネーションというか…』
『ふざけんな!!明らかに直撃コースだろうが!!!』
『あ…』
『ティアナ!!仲間を”撃つ”なんてどういうつもりだ!!!!』

「あたしは…」
ただ、証明したかっただけ
大した力がなくとも戦えるのだと
膨大な魔力や、特殊な能力がなくともやって見せると
だが、その結果は散々なものだった
わざとではない、それは皆理解している…だが、そんなことは関係ないのだ
いかな理由であれ、仲間に銃口を向けたのだから…
「…ふ、でもよかったのかもね、やっぱりあたしはここにいるべきじゃない」
そう言って、ティアナは自嘲気味に笑う
「戻るだけ…そう、初めのときと同じ…あたしはずっと一人でやってきた」
そう口では言うがどうしても思い出してしまう…機動六課に来たときのこと
いや、それより前…訓練生時代を
「まったく、スバルはいつもとんでもない事しでかしてくれたわよね」
訓練生時代、スバルと組まされたときはとんでもない疫病神だと思った
力加減はできないわ、べたべたしつこいわ、しなくてもいい失敗を繰り返すわ
「…でも、楽しかったわね」
そう、なんだかんだと言いながら今までコンビでいられたのは楽しかったから
一緒にいると気持ちが軽くなったから…
「…く…泣くもんですか、あたしは、あたしには夢があるんだから」
そう、たとえこの場を離れることになろうともそれは、決して潰えることはない
「そうだ、あたしは今までそうやってきた…これからも、そうするだけ」
その瞳に映るのは今までと同じ、そしてこれから歩む道
…しかし
「…あれ?」
その瞳からは小さな雫がぽろぽろと零れ落ちる
「…く…冗談じゃ、ない…わよ…あたしは」
気丈に、必死で自分に言い聞かせる
しかし、一度壊れた感情の扉は決して閉じることはない
「うっく…あたしは、あたしはこんなに弱かったの?スバルたちと別れるかもしれないってだけで…う」
その言葉が引き金になったのか、ついにティアナはその場にくず折れる
「わああぁぁぁぁ…あたしは、あたしは!」
そして、堰が切れたように泣き叫んだ

それからどれくらい経っただろう、ふとティアナは人の気配を感じた
だんだんとその気配は近づいてくる…そして現れたのは
「ティア!こんなとこにいたんだ」
「スバル?」
「ス、スバルさん、そんなにさっさと行かないでくださいよ?」
「あ、ごめん、ついいつもの調子で」
そして、茂みからは少し疲れた顔のエリオとキャロも現れた
「あれ?どうしたの、目赤いけど」
「!な、なんでもないわよ!」
「?まぁいいや…ねぇ、ティアはこれから訓練?」
「…だったら、なに」
「一緒にやろうよ、今までとは違ったフォーメーションとか考えてみたんだ」
「…」
「それにほら、最近個々の能力アップのために…」
「うっさい!!」
「?!」
ティアナは一喝するように叫ぶ
「ティア…」
「…あんたもいい加減にしなさいよ、さっきも言ったけどあんたらと一緒にやる気なんてないの」
「…」
「チームってのは、互いに信頼しあって初めて機能する…だから、あたしは」
「あたしたち、少しもティアのこと疑ってない…信頼してるよ」
ティアナの言葉に、スバルはそう言って微笑む
「…ばか言わないで、そんなこと」
「本当ですよ、僕たちが今までやってこれたのはティアナさんの的確な指示があったからです」
「そうですよ、それにティアナさんはあんなにすごい事ができるじゃないですか」
エリオの言葉を引き継ぐ感じで、キャロもそう言ってティアナを励ます
「…制御しきれなければただの暴走よ」
「だから、あれはあたしにだって落ち度はあったって」
「慰めなんかいらないの…自分の力すら把握しきれないのに、今までよくも偉そうにしてきたわ
 …ばかみたい」
ぱしん!…
「…え?」
「…」
乾いた音が響く
スバルがティアナの頬を叩いたのだ
「らしくない!」
「は?」
「一度や二度の失敗が何だよ、次から頑張ればいいじゃん」
「…」
「そうですよ、誰しも一度や二度は失敗します…同じ過ちを繰り返さないようにすれば、それでいいじゃないですか」
「そうです、失敗は成功の母、とも言います。次から頑張ればいいんですよ」
「…」
エリオとキャロもスバルの後に続いて言葉をつむぐ
「ねぇ、ティア…あたしずっと思ってた事があるの…でも、ティアはばかじゃない、って言うと思うから
 言わなかったけど…言うね」
そう言って、スバルは笑顔で言葉をつむいだ
「ティアのこと、大好きだよ♪」
「!」
その言葉を聞いたティアナの瞳から小さな雫が溢れだす
「あたしは…あんたに大怪我させるところだったのに」
「無事だったんだから気にすることないよ…それに言ったでしょ、ティアのこと大好きだって
 だから、あれくらいのことなんでもないよ♪」
「スバル…う…ううぅ…」
ついに堪えきれなくなり、ティアナの瞳から雫が零れ落ちる
そんなティアナを、スバルは優しく抱きしめた

その後…

「スバル、いったわよ!」
「オッケー、任せて!」
向かってきたドローンを一撃で粉砕する
それを確認したティアナは、すぐに次の指示を出す
「キャロ、魔力強化を!」
「はい!」
「エリオは左翼のやつをお願い」
「了解です!」
「スバルは右翼…正面はあたしが引き受ける!」
「わかった!」
「よし…いくわよ!」

四人の絆は、より深まり
後に”六課四天王”と呼ばれるようになった…


---------------------------------------------------------------------------------
あとがき
 第7話を見終って即思いついたネタです
多少重い感じもありますが…
あ、ちなみにスバルの好き、は友達としてです
皆さんが考えてるようなピンクな関係ではありません(笑)

      
 
inserted by FC2 system