はやての恋煩い


  




「・・はぁ・・うち、いったいどないしたんやろ」

アースラの食堂で一人
はやてはテーブルに突っ伏していた

「なんやろな、この胸のもやもやしたんは」
そう言ってはやては自分の胸に手を当てる
「しかも、決まってあの人のこと考えてるときや」
”あの人”というフレーズにまたも胸の辺りがちくちくとしてくる
だが、不快いというわけではなく、むしろ心地よいものだ
「・・なんなんやろ・・」
「はやてじゃないか、どうしたんだそんなところに一人で?」
「え?あ、クロノくん」
声のしたほうを振り向くとなにかと世話を焼いてくれるアースラの艦長
クロノ・ハラオウンが飲み物を持って立っていた

「相席、いいか?」
「うん、ええよ」
はやての言葉にクロノは失礼と言って席に座った
「それで、どうしたんだ?」
「え?」
「何か考え事をしていたみたいだが・・・僕で力になれれば協力するぞ?」
そう言ってクロノはコップを傾けた
「そんな大層なもんやないから、気にせんといて」
「・・・なら、いいが。いざという時それが枷にならないとも限らないからな」
「大丈夫や、うちかて捜査官の端くれや、ちゃんとけじめはつける」
「・・・分かった。まぁ、君がそれくらいでどうこうなるとは思ってないがな」
そう言ってクロノは微笑んだ
「それって、褒めてんのかけなしてんのかどっちや?」
「どちらとも取れるな」
「あ、ひっど」
「はは・・」
「・・・もう」
と、二人がそんな感じで話しているともうひとり珍しい人物が食堂に現れた

「あれ?珍しい組み合わせだね」
そう言って現れたのは・・
「君こそ珍しいな、ユーノ。滅多にこっちには来ないのに」
「僕だって、ずっと無限書庫にいるわけじゃないよ」

ユーノ・スクライア。無限書庫の司書でなのはたちのよき友人だ
クロノは何かと無理を強いているが・・・

「それより、例のやつは終わったのか?」
「ああ、おかげさんで休む暇もなかったよ」
ユーノは皮肉を込めてクロノに報告した
「まぁ、当然だがな」
「そう思うならもう少し考えてくれ」
「・・・・ああ」
「ちょっと待て、何だその間は?」
「深い意味はない」
しれっと、クロノはそう言う。と、ふとはやてを見るとなにやら固まっている
「どうした?はやて。気分でも悪いのか」
「え?う、ううん。なんでもないんよ」
はやてはそう言うが、どことなく顔が赤いような気がする
「気分が悪いんなら無理しないほうがいいよ?なんなら医務室ついていこうか?」
と、ユーノがはやてに近づくと
「?!な、なななな、なんでもないから、大丈夫やから」
「?そ、そう。ならいいけど」
「・・・・・」
「あ、えと、うちもういくな。それじゃ」
そう言ってはやてはそそくさとその場を離れた


「・・・僕って、はやてに嫌われてるのかな?」
「いや、むしろ逆じゃないか?」
ユーノの問いにクロノはそう言って笑みを浮かべた


翌日
はやては昨日のことを謝ろうと無限書庫に来ていた

(昨日は避けるように席を立ってしもうたからな、ちゃんと謝っとかな)
そう言ってはやては無限書庫に入ろうとした・・・・と、中から話し声が聞こえた
『はやて?どうかしたの』
(うち?何の話やろ)
いけないとは思いつつもはやては聞き耳を立てた
『うむ、最近主の様子がおかしいのだ』
(この声は・・シグナムか?)
『おかしい?別に変なところは見られないけど』
『いや、そういった意味ではなくてだな・・・なんというか、うわの空な時があるのだ』
『?何か考え事をしているのならおかしくはないだろう?』
『・・そうなのだが』
(・・・そう言われれば、そないなことがあったような・・・)
『こういうことは言いたくないけどさ、シグナムはもう少しはやてと距離を置いたらどうかな?』
『・・・なぜだ?』
(あ、怒っとる。シグナム絶対怒っとるわ)
『別に離れろって言ってるわけじゃないよ。人にはそれぞれ自分の時間がある』
『・・・・』
『シグナムだって、これから好きな相手ができたらその相手との時間が多くなるだろう?』
『主と供にいる時間以上に大切な時間などない。第一、私のようなものに好意を抱くものなど・・・』
『いるだろ?僕たちが』
『・・スクライア』
『僕だけじゃない。なのはやフェイト、クロノたちアースラのみんなもだ』
『・・・・』
『だから、まずは名前で呼んでくれないかな?そのほうが僕も気が楽だ』
『・・ふ、分かった・・ユーノ』
『うん、ありがと、シグナム』
(・・・・ユーノ君、優しいな・・・でも、何やろ・・・胸が・・苦しい?)


その後、結局はやては無限書庫には入らず
アースラへと戻った
そこで偶然なのはとフェイトと出会いお茶をすることになった

「珍しいね、はやてちゃんが落ち込んでるなんて」
「え?うちそう見えた?」
「うん。私でも分かった」
「・・はぁ、二人にまで気づかれるんは相当やな」
そう言ってはやてはすべてを話した


「・・・・」
「・・・・」
「ど、どないしたん、二人して顔見合わせて」
すべてを聞いたなのはとフェイトは顔を見合わせこう思った
(はやてって)
(はやてちゃんって)
((鈍い!))
「?」
二人の考えなど露知らず、はやては首をかしげていた

「はやてちゃん、今から私たちの言うことを考えてみて」
「考えるだけで、何も言わなくていいから」
「?よう分からんけど、分かったわ」
「じゃあ、ユーノ君のことを考えて」
「・・・・・ポ」(赤)
「ユーノと他の女の子が仲良くしてるところを考えて」
「・・・・・ム」(怒)
「ユーノ君と二人で旅行」
「・・・・・・」(笑)
「ユーノからの告白」
「・・・・・・・」(固)
「・・はやてちゃん」
「・・はやて」
「え?なんや?その哀れみの眼は」
「だって・・ねぇ?」
「うん、分かりやすすぎ」
二人はそう言って声をそろえはやてにこう告げた
「ユーノ君が・・」
「ユーノが・・」

『好きなんだよ』

「・・・えぇぇ〜?!」
二人の言葉にはやては一息送れて驚きの声を上げた
「せやけど、うちとユーノ君はそないに会ったりしとるわけやないし」
「そういうのって時間じゃないんだよ」
「・・そういうもんか?」
「そういうものだよ、私となのはがいい例じゃない?」


そう、なのはとフェイトは今でこそこういった感じで話すことができているが
会った当初は真剣な戦いまでするほどだった
しかし、なのはの頑なな呼びかけと、”友達になりたい”という純粋な想いのおかげで
紆余曲折の末、二人は真の意味で友達になれたのだ


「せやけど・・・」
「ユーノって鈍いよね」
「そうだね、微妙に」
「・・なにが言いたいん?」
二人の遠まわしな言い方にはやては怪訝な顔をした
「はっきり言わないと友達としてしか見られないって事」
「・・・・」
「というわけで、言ってこよう」
険しい顔をしているはやての肩を笑顔で叩きなのははそう言った
「ふぇ?」
「それがいいね」
「はぇ?」
「では、いざユーノ君のもとへ」
「にゃあぁぁぁ?!」
はやてはなのはとフェイトに抱えられるように連れて行かれた


そして、はやてを連行するように無限書庫にやってきた
「あれ?なのは、フェイト・・・と、はやてはどうしたの?」
「・・なにも聞かんといて」
「う、うん・・」
「とりあえず、ユーノ君に話があるの」
「僕に?」
「うん・・・はやてが」
「うぇ?!」
はやては二人に突き出されるように解放された
「じゃ、ごゆっくり」
「がんばってね、はやて」
「え?ちょう待ち、そんな急に言われても」
「はやてちゃん、こういうことは自分の力で、ね♪」
「いや、なのはちゃん、その笑顔はなんや?」
「はやて、応援するからね」
「いや、フェイトちゃんもそない満面の笑顔で・・」
「「がんばってね〜♪」」
そう言って二人は笑顔で無限書庫をあとにした


「・・えーと、はやて。なにかな?話って」
「え?あ、えと・・その・・・」
「?」
なにやらしどろもどろなはやてにユーノは首をかしげた
「えと・・・変なこと聞くけど、ええか?」
「別にいいけど・・なに?」
「・・ユーノ君、好きな娘って・・・・おる?」
「え?」
「・・・・」
「・・・気になる娘なら・・いるよ」
「・・・・・そか・・・」
ユーノの言葉にはやては一言そう言ってうつむいた
(はは、お笑いやね、そないな気持ちやないって言うとったのに。こんなことで自分の気持ちに気づくやなんて)
「はやて?」
「あ、ごめん、なんでもないんや。悪かったな、時間とらせて」
「いや、べつにいいんだけど」
「それじゃ、うちいくわ」
そう言ってはやてはきびすを返した
しかし、そこでユーノが声を上げた
「はやて、待って!」
「・・・」
「その・・・こんなこと迷惑だろうし、言うのはやめようって思ってたんだけど」
「・・・・・」
「ごめん、やっぱり黙ってられない」
そう言ってユーノははやてに近づいた
「いやならそう言ってくれればいい。僕は・・・・はやての事が気になってる」
「?!」
「こんなことこういう場所でいうことじゃないかもしれない、だけど」
「・・・」
「いつも明るく、そして人のことを第一に考えて、行動できる」
「なのはとは違った感じで、うまくいえないけど危なっかしいんだ」
「・・なんで?」
「人のことを第一に考えて、自分のことを後回しにする」
「・・・・」
「だから、自分がどれだけ傷ついても気にしない・・・からかな?」
「・・・・」
「・・・ごめん。変なこと言って・・気にしないで、はやての気持ちを無視する気はないから」
そう言ってユーノが動く気配がする
はやてはとっさに振り向き叫んでいた

「せやったら、うちのこと護ってくれへん?!・・・一生」
「はやて?」
「うち、ユーノ君が好きや。気になる娘がおる言われたときはっきり分かった」
「・・・・」
「ユーノ君の言うとおり、うちはみんなが傷ついてるのはみたない。そのためなら命だってかける」
「せやから・・・・・護って・・くれへん?・・うちのこと」
「・・・・・」
はやての言葉にユーノは黙った
そして、静かにこう続けた

「僕は戦いとかは苦手だよ?」
「え?」
「まぁ、努力はするけどね・・・それでいいなら」
そう言ってユーノは微笑んだ
「うん・・・ええよ、一緒にいてくれるだけで、うちはそれだけで・・・」
「・・うん」
「あはは、なんや涙出てきたわ・・うれし泣きってホンマなんやな」
そう言ってはやては目元をぬぐった
「・・はやて」
「あ・・」
静かにユーノははやてを抱きしめた
「えと・・・」
「嫌?」
「・・・そないなことないけど」
「じゃあ、しばらくいい?」
「・・・うん」


翌日

「ユーノ君、はいお弁当♪」
「ありがと、はやて」
そう言ってユーノははやてから弁当を受け取る
「今日はユーノ君の好きなものばかりやからね」
「ホント?うれしいな」
「えへへ」

「・・・ねぇ、フェイトちゃん」
「・・・なに?なのは」
「なぜか知らないけど、むかつくね」
「・・うん、私も・・・」

などと二人が話しているのも知らず
ユーノとはやてはイチャついていた



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あとがき
 というわけで、簡単に言ってしまえばユーノ×はやてです
ちょっともやもやしたところから甘い感じに・・・と思って書いたんですが
全然だめですね、ごめんなさい。


 
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