それは悲しい願いなの


  

終章 心の絆




そして、アースラへ戻った面々はまずアリッサを救護室へ運んだ
医師の話では急所は外れており、命に別状はないようだ
ただ、精神的なものか目を覚まさないらしい
不安がる皆に、脳波に異常はないので2,3日すれば目覚めるだろうと付け加えた


「どうやら大丈夫なようで安心したな」
「そうだね、一時はどうなるかと思ったよ」
「抱きつく形だったのがよかったんじゃないかな?」
「そうかもな」
「・・・・」
と、皆安心しているなかアルベルトだけが不安顔だ
「どうした?命に別状はなかったのに」
「目覚めぬのは精神的だといっていた。もし俺のせいなら・・・」
「そんなことないよ」
「そうだよ、いろいろあって疲れてるだけだって」
「そや、大体何でもかんでも自分のせいにするんはよくないよ」
なのは達はそう、励ましの言葉を送る

「・・・お前たちは、なぜそこまで他人を信じれるのだ?」
「?変かな」
「えと、よくわからない」
「困ってる人がおったら助けるんは当たり前ちゃうん?」
「・・・・・ふ」
なのは達の言葉にアルベルトは苦笑した
「あ、なんかバカにされてる?」
「・・なのはをバカにするのは許さない」
「大笑いされるんはええけど、そういう風に笑うんは許せへんな」
「ふふ・・いや、すまない」
アルベルトはそういって三人に謝った
「ただ、純粋だと思ってな」
「?」
「そうかな・・」
「そういうんは意識したことないなぁ」
「そういったところが純粋だといっているんだ」
アルベルトの言葉に三人はやっぱり分かっていないようで、そろって首をかしげている
「・・・話しの最中悪いが、いいか?」
「・・ああ」
「今回のことに関して、まずはロストロギア不法所持、次に時空管理局執務官たちへの暴行」
「・・・」
「通常ならば査問会にかけられるものだ・・・」
クロノはそこで話を切り、なのは達を見た
「とはいえ、そんなに大きな被害はなかったし、なのはたちが許すって言うなら特に問題はないな」
クロノの言葉にはなのは達は当然という感じで
「私は別にいいよ」
「なのはがいいなら、私も」
「うちも別に。たいした怪我をしたわけでもないからな」
「と、いう訳だ。上には僕から適当に言っておく、今日はゆっくり休むといい」
「すまない、面倒をかける」
アルベルトはそういってクロノたちに深々と頭を下げた


その翌日、アリッサは目を覚ました
「えと、心配かけてすみませんでした」
「ううん、無事でよかったよ」
「まだ、少し検査があるみたいだけど、頑張って」
「検査っていうんは退屈やからな、覚悟しとき」
「うん、ありがとう」
と、扉のところにアリッサたちを静かに見守っているアルベルトの姿が見えた
「アル、そんなところにいないでこっち来てよ」
「・・・・」
「?」
「だから、問題ないって言ってるやろ?」
なかなか入ってこないアルベルトにはやてがそう声をかけた
「しかし・・」
「あのね、アルベルトさん、アリッサちゃんが目を覚まさないのは自分のせいだって思ってたんだよ」
「そんなこと思ってたの?」
なのはの言葉にアリッサはアルベルトを見た
「・・可能性としては、ありますし」
「はぁ・・悲しいな、せっかく分かり合えたと思ったのに」
アリッサはそういって泣きまねをする
「そ、それとこれとは別です。こういったことははっきりさせないと」
そういうアルベルトにフェイトが諭すように静かに口を開いた
「そんなに、気にしなくていいと思うよ」
「・・・そういうものか?」
「うん。最初は戸惑うかもしれないけど、自分が思ってるほど相手は気にしてないから」
「・・なんか、説得力があるな」
その言葉にフェイトははにかみながら
「私も、クロノやリンディ提督と家族になるとき、そうだったから」
「・・・そうか」
フェイトの言葉にアルベルトは特に詮索はせずにうなずいた
「・・では、また後できます」
「何か用事でもあるの?」
「少し・・・・そうだ」
アルベルトは何か思いついたようになのは、フェイト、はやての三人を見た

「・・このようなことを頼める立場ではないが、できればアリッサと友達になってくれないか?」
「?!ちょっと、アル。そんなこと言わないでよ」
「そうだよ、そんなこと言われなくたって」
「私たちは友達だよ」
「そうや、違うゆうてもうちらはそう思ってる」
「・・・そうか」
なのは達は当たり前って感じではっきりと断言した
そしてアリッサのほうを見てみると、恥ずかしいのかうつむいている
きっと顔は真っ赤だろう

「では、少ししたらまた来ます」
「今度は私たちともお話しようね」
「ああ、時間の空いたときに・・」
そういってアルベルトは病室を後にした


病室から出てしばらくすると前のほうからクロノが歩いてきた
「やあ、どうだい?彼女の様子は」
「ああ、おかげさまで元気だ」
「そうか・・」
「・・・いろいろと手を尽くしてくれたらしいな」
「みたいだな、僕は医師ではないからよく分からないが」
「いや、それもそうだが、事件についてだ」
「?」
「さぞかしいろいろ言われたのだろう?上の連中に」
アルベルトの言葉にクロノは肩をすくませて答えた
「まぁね、でも2回目だから、そんなに苦ではないよ」
「2回目?」
「ああ、フェイトも似たような感じだったんだ」
「そういえば、本当の兄妹ではないのだったな」
「フェイトから聞いたのか?」
「先ほど少しそれらしい話をしてな」
「そうか・・・」
その後、いくつか話をして食堂へ昼食を食べてから
再度、病室へ向かった


「失礼します」
「あ、アル」
「お一人ですか?」
「うん、フェイトちゃんとはやてちゃんは仕事で、なのはちゃんは一度家に帰るって」
「そうですか・・」
「・・・・」
「・・・・」
しばらく無言の時間が流れる
そして、最初に口を開いたのはアリッサのほうだった
「ねぇ、もう大丈夫なんだよね?」
「え?」
「ずっと一緒にいられるんだよね?」
「・・・ええ、あなたが望む限り、ずっと・・」
「・・うん・・・ありがと・・・」
そういったアリッサの頬を一筋の涙がこぼれた




夢を見ていた
夢の中で、私は隣にいる人の肩に頭を乗せていた
とても、幸せで、暖かい時間

でも、夢
目が覚めれば、消えてなくなる儚い・・夢

だけど、もう夢じゃない

私の隣には夢のような・・ううん、もっと温かな人がいる
この人が私のことを思ってくれる限り、私は前に進める

この胸にある心という名の絆があれば・・・・






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