クロノとフェイト


  




「・・・・」
「どうした、フェイト」
「あ、クロノ」
「さっきから少し元気がないみたいだが」
「・・そんなことないよ」
「・・・・」
「・・・・」
二人はしばらく無言で座っていた。ほんの数分、いや数秒だったかもしれない
不意にフェイトが口を開いた
「・・私はここにいてもいいのかなって」
「え?」
「母さん・・・ううん、プレシアがやろうとしていたことがどんなことか知っていながら止めようとしなかった」
「・・・」
「結局最後まで私の一人相撲だったけど・・・・それでも認めてもらいたかった」
「フェイト・・」


プレシア・テスタロッサ。ロストロギヤ”ジュエルシード”を集めていた魔道士
フェイトはその娘だった。しかしプレシアの本当の娘はアリシア・テスタロッサという名で
しかも数年前に命を落としている
そう、フェイトはそのアリシアの代わりにプレシアによって生み出されたいわば”ホムンクルス”だったのだ
そしてプレシアはそのアリシアを蘇らせるためにジュエルシードを集めていた
しかし最後はそのアリシアとともに次元の波に飲み込まれた


「なのはには本当に感謝してる。こんな私を友達だって言ってくれたから」
フェイトはそういって微笑んだ
「そうだな、僕もなのはに出会えてよかったと思う」
「うん、でもだからこそ私なんかでいいのかなって思うの」
「何を言ってるんだ、誰もフェイトのことそんな風に思ってないよ」
「・・・・」
クロノの言いたいことは分かる。しかしそれでもフェイトはそれでいいのかと考えてしまう
フェイトが無言でいるとクロノが思いもよらぬことを話し出した
「僕の父親は5年前死んだ」
「え?」
「ロストロギヤのひとつを調査している最中に」
「・・・」
「母さんがいたから僕はこうしていられる。母さんだって辛かったのに、僕のことを一番に考えてくれた」
「だから母さんには本当に感謝してる。今ではエイミィたちもいるし」
クロノはそういってはにかむように微笑んだ
「・・最初は同情だったんだと思う」
「私のこと?」
「うん、きっと自分を重ねてみてたんだと思う」
「クロノ・・・」
「僕よりフェイトのほうが辛いだろうけどね」
クロノはそこで言葉をきり、こう続けた
「・・でも、次第に気にしなくなった」
「どうして?」
「ひとつはそのほうがいいと思ったからだ。周りの人間にかわいそうだねって見られるのは本人にしてみればすごく辛いことだから」
「・・・・」
「もう一つは・・・・変わったから」
「何が・・変わったの?」
「見方、さ。フェイトのことをはじめは同情というか同じ経験をした仲間のように見ていた」
「・・・」
「だけど・・僕はフェイトのことを仲間とか友達とかじゃなく、異性としてみるようになったんだ」
「!?」
「はは、何を言ってるんだろうな。だけど、僕はフェイトのことをそう見るようになってしまった」
「・・・・」
「もちろん、だからどうってことはないんだ、迷惑だろうし、押し付けるつもりもない」
「迷惑じゃない!」
「・・フェイト?」
クロノの言葉にフェイトにしては珍しく大声を上げた
「そんなことない、私もクロノには感謝してる」
「・・・」
「私の弁護をしてくれたときも忙しいのにいろいろと手を尽くしてくれて」
「今だって、したくない話もしてくれて」
「あれは別にそういったものじゃないよ、ただ話すようなことではないだけで」
「そんなことない、自分の過去を、それも辛い話しなら簡単にできるものじゃないよ」
「・・フェイト」
そこでフェイトは言葉を切り、静かに、まるで自分自身に確認するように続けた
「・・・ねぇ、さっき言ったこと本当?」
「え?・・ああ、本当だ」
「・・じゃあ」
フェイトは少しためらうような仕草をしたがはっきりと答えを口にした
「良いよ、クロノなら」
「え?それって・・・」
「・・うん」
顔を赤くしながらもフェイトはしっかりとうなずいた
「・・・そうか」
「・・・・・(赤)」
二人は顔を赤くしながら見つめあった
「・・・・フェイト」
「あ・・クロノ」
「・・いいか?」
「・・・・・うん」
そして二人の距離は・・・・
『クロノ執務官、フェイト・テスタロッサの両名は至急ミーティングルームへ』
「わっ」
「きゃ」
『繰り返す・・・』
二人の距離がゼロにというところで召集アナウンスが入った
「・・・」
「・・・」
「・・・く」
「・・・ふ」
「ははは・・」
「ふふふ・・」
そして二人はどちらからともなく笑った
「・・はぁ、いこうか。フェイト」
「うん。クロノ」


もう迷わない。あるべき場所、守るべき人のために
私を信じてくれた人、私を友達と呼んでくれた人
こんな私を受け入れてくれた人たちのために
そして・・・

「クロノのために・・・」


おしまい


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あとがき
  というわけでクロノ×フェイトでした。
まぁ、簡単にいえば二人が恋仲になる話しですね。
いくつか根も葉もない部分がありますがそこは愛嬌ということで(笑)
というか話しの構成上そうせざるをえないのですが・・・
今度はなのは×ユーノでも書こうかな・・・

 
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