もう一つの災害

  

これは、空港火災の起こった半年後のこと
まだなのはとフェイトが自分の隊で任務をこなしているとき
はやてが、改めて”機動六課”立ち上げを決意したときのお話

ミッドチルダ バルティルスバスターミナル

その日、バスターミナルで火災が発生した
原因はタバコの不当廃棄
通常のごみ箱にまだかすかに火が残っている吸殻を捨てたため
捨てられていたごみに引火したのだ
当初は大した勢いはなかったが、隣のごみ箱の中にある缶に入っていた
アルコールに引火して、その勢いは数段大きくなった
この火災で負傷者二百余名、重傷者十余名という
大災害となった

その日、研修のためにそのバスターミナルの近くにいたはやてもその消火作業に加わった
「すみません、消火作業を手伝いにきた八神はやて一等陸尉です」
「ご協力感謝します、タイト・ディーク一等陸士です」
そう言って、タイトと名乗った青年は敬礼する
また、はやても倣い敬礼
「早速やけど、状況は?」
「はっきり言ってかなり困難な状況です、中にはまだ千名余りの民間人が取り残され
消火作業は見てのとおり滞っており、また、救出要員が少なすぎるため救出作業が行えない状況です」
「本局の救援は?」
「早くとも三十分はかかるかと…」
その言葉に、はやては悔しげな顔をする
「…うちが救出に行く、タイト一等陸士は消火作業に専念してください」
「危険です?!いくら八神一尉とはいえ、この炎では…」
「せやけど!このままじゃ中の人がいつ命を落とすかわからん、本局の救援まっとったら
それこそ、死なんでええ人らが死んでまう!」
はやての必死の訴えに、タイト一等陸士は言葉を失う
「…たとえ何があろうと、死んでええ人なんかおらん…まして、無関係な人間ならなおさらや」
そう言って、はやては炎の中へ…
「待って下さい!」
「なんや?!はよせんとほんまに手遅れに…」
「…聞こえるか?消化班はすぐに作業を中断、これより救出作業を行う
第一班から四班まで至急本部に集合、残りは引き続き消火作業を続行」
「タイト一等陸士…」
「…本音を言えば、私もあなたと同じ考えです
しかし、私の力ではこの炎の中に突入することはできない…力のない自分が、悔しい」
そう言って、拳を握り締める
そんなタイト一等陸士に、はやては優しく言葉をつむぐ
「気にせんでええ、中の人らは絶対うちが助ける…それに力がないんやったら
つければええだけや、うちかて最初からここまでの力があったわけやない」
「八神一尉…」
「タイト一等陸士、第一班から第四班、集合しました」
と、そこでちょうど消化班が到着した
「よし、これより八神一尉が救出作業を行う。突入口を確保するんだ」
「了解!」
「すまんな、手間かけさせて」
「いえ、本来我々が突入せねばならないのです、これくらいのことなら喜んで」
「おおきにな…リイン」
「はいです」
それまで隣で静かにしていたリインが応える
そして、ジャケットを装着し…覚醒
「では、お気をつけて」
「うん、じゃあ行ってくるな」
そう言って、はやては炎の立ち上るバスターミナルの中へと突入していった

ドゴォォォォォォォン!
「こういうとき、広域タイプは辛いな…まぁ、愚痴っとってもしゃあないか」
そう言って、はやては瓦礫を破壊しつつ進む
中は思っていたより被害が大きく、所々に瓦礫やガラス片などが散乱していて
かなり危ない状況だった
「はよせな、ほんまに手遅れになる」
そう言って、はやては移動速度を上げた

突入してどれくらい経っただろう
広いホールに出た
「誰かいませんか?!管理局員です、救助に来ました」
「こ、ここです」
はやての声に応える声
そちらを見てみると百人前後の人が集まっていた
「大丈夫ですか?怪我とかは」
「それなりに大丈夫です、でも…」
その言葉にはやては改めて惨状を認識する
そこにいる人々はきり傷ややけどなどを負っていて
誰も彼も、憔悴しきっていた
「…今すぐ、皆さんを安全な場所まで運びます、それまで少し辛抱してください」
「は、はい」
その後、何往復かしてホールにいた人々は皆救出された
しかし、報告では千人余りと言っていた
なら、まだ中に逃げ遅れた人がいるのだ
「はぁ…はぁ…はよせな」
さすがにはやてもこれだけ行動していると、疲れもたまっていく
しかし、ここで止まれば被害は拡大する一方だ
「そないなこと、絶対させん!」

それから、いくつかの通路を通って少し広い場所に出る
「ここは…」
どうやら、ここは待合所のような場所らしい
「…ん?」
と、ふとかすかにだが、声が聞こえた
「…こっちか?」
空耳の可能性もあったが、今の状況を考えると
たとえそうであっても、確かめなければいけない…そして、それは空耳などではなかった
声のした場所、そこには瓦礫に足を挟まれている少女がいた
「大丈夫か?!」
「ひっく…痛いよぉ…まま…うわぁぁぁん」
「安心してな、今すぐ助けたる、ママのとこにもつれてったるからな」
そう言って、はやては集中する
(少しでも狂えば取り返しの付かないことになる…集中して…絶対、成功させてみせる)
「ホーリーランス!」
ビキィィィン
はやての魔法は見事に少女の上の瓦礫だけを破壊した
「?!…ひどい、今すぐ治療するからな」
「ぐす…痛いよ、まま…」
「大丈夫や、すぐ痛みは治まる…ママにもあわせたる」
少女の足からはかなりの出血
もしかしたら、骨が折れている可能性もある
「…あかん、うちでは出血止めるんが精一杯や」
「ひっく…ぐす…」
「ちょこっとだけ我慢してな、すぐ助けたるから」
そう言って、はやては少女を抱えて全力で飛んだ

「タイト一等陸士!」
「八神一尉…その少女は?」
「怪我人、それもやばいかも知れん!」
その切羽詰ったはやての言葉にすべて理解したタイトはすぐに医療班を呼んだ
「大至急だ!手の空いているものは即座に集合してくれ」
「…」
「大丈夫です、見た限り命に別状はなさそうです」
「せやけど?!歩けななったりしたら」
と、そこで息咳き込んでかけてくる女性がいた
「すみません、娘がまだ中にいるんです!助けてください!」
その声にずっと泣いていた少女が顔を上げる
「ままぁ〜」
「リン?!…ああよかった」
そう言って母親らしき女性は娘にかけよる
だが、当然その状態にも気づく
「リン、怪我したの?!」
「うん、すごく痛くて、寂しくて…でも、そこのお姉ちゃんが助けてくれたの」
そう言って少女ははやてを指差す
「あなたが…」
「すみません、もっと早く助けられればこんな大怪我せずに済んだやろうに」
そう、謝罪するはやてに母親は優しく声を掛ける
「いえ、助けていただいてどうもありがとうございました…怪我はいずれ治ります、でも命を落としていたら
 それすら叶わないんです…ですから、ありがとうございます」
「…」
その後、医療班が到着し
少女、リンの怪我を治療にかかった
幸い、出血はひどいものの軽い打撲程度だったため
一週間ほど安静にしていれば完治するとのことだった

それから約十分ほどして本局の救援が到着
ターミナルに残された人々は皆救助され、火災も鎮火した
しかし、その状況は決して褒められるようなものではなかった…

そして、任務を終え自室へと戻ってきたはやては
改めて本局の管理体制に疑問を持った
「やっぱ、遅すぎるわ」
「はやてちゃん?」
「そう思わんか?リイン」
「…確かに、どうしても許可を取ってからの行動になりますから
 否応にも、対応は遅くなるです」
「せや…だから、やっぱそういった垣根を越えて行動できる部隊が必要や」
「新部隊のことです?」
リインの言葉にはやてはうなずく
「少数精鋭、どないな状況にも対応できる部隊…それを、立ち上げなならん」
「できるです?」
「できる!…もちろん、平坦な道やないけど、絶対立ち上げてみせる…もう、あないな思いはたくさんや」
「はやてちゃん…」
「せやから、リインにもいろいろと手伝ってもらうことになると思う…協力、してくれるか?」
はやての言葉にリインは胸をそらせ自信満々に言う
「当然です、リインにかかればそんなのお茶の子さいさいです」
「あはは、大きくでたな」
「大丈夫です、はやてちゃんなら出来るです…リインも、シグナムたちもいつだって信じてるです」
「…ありがとな」

いつになるか、うまくできるかもわからん
せやけど、絶対に立ち上げてみせる
災害救助や、一級指定遺失物…ロストロギア
そんな、人々に災いが降りかかるようなことから護る

新部隊…”機動六課”を



---------------------------------------------------------------------------------
あとがき
 はい、まぁいろいろとツッコミどころもありますが
とりあえず書きたいから書いた、それだけです(笑)
あと、当然ながら本編とは一切関係ありませんのであしからず…

      
 
inserted by FC2 system