夜空に舞う願い


  




「七夕?」
「うん、もうすぐだなぁって」
「ああ、そういえばそうやなぁ」

今日は久々の休みということで
なのは、フェイト、はやての三人はなのはの家に集まっていた

「ねぇ、なのは。七夕って何?」
「え?フェイトちゃん知らないの?」
「あ、う、うん…」
なのはの問いにフェイトは顔を赤くしてうなずいた
「知ってないとおかしいのかな?」
「そないなことないって、知らんのやったらこれか知っていけばええんやから」
「そうだよ。あ、じゃあ七夕についてお話しようか」
「そやな、簡単に概要だけ話して後は実際やってみればええやろ」
「お、お願いします」
授業でも受けるような返事をして、フェイトは二人の話に耳を傾ける

「まず、七夕の元になったお話は悲恋のお話なんや」
「悲恋?」
「うん、彦星と織姫って男女がいてね」
「二人は互いに愛し合っていたんやけど、家の事情で結ばれることはなかったんや」
「そ、そうなの?」
「うん、でも二人は結ばれないと分かっていても何度も会ってたんだ」
「せやけど、それがばれてな。二人の間に天の川いう大きくて長い川が引かれたんや」
「え?じゃあ…」
「うん、その川を渡ることは二人には出来なくて、でも二人は互いに川岸で一日中立っていたんだって」
「せやけど、どちらからも相手を見ることは出来んかった…それほど大きな川やった」
「そんな……」
「だけど、そんな二人を見てる人がいて、これじゃあまりにもかわいそうだって一年に一日だけ天の川に橋を渡して二人が会えるようにしたの」
「それが7月7日、七夕の日なんや」
「そんなお話があったんだ」
「でも、七夕は日本だけのお話みたいやね…あ、それにほかにも日本だけの行事って結構あるんよ」
「そうなの?」
「うん、バレンタインやホワイトデー…あ、後クリスマスイブもやったかな」
「へぇ〜」
「といっても、人づてに聞いたことやからホンマかどうかは知らんけどな」
「あ、でもバレンタインはお菓子会社が売り上げを上げるために作ったって前テレビでやってたよ」
「……すごいな、二人とも」
そう言ってフェイトはため息をついた
「え?なにが」
「だって、そんなにいろいろ知ってるんだもん」
「まぁ、うちの場合はなんもすることがなかったから本ばかり読んでたからやけど」
「私もネットとか見てたら自然に…」
別になんてことないんだよ、という二人の言葉にフェイトはさらに落ち込んだ
「…そんなに自然に出来るなんて…私はやっぱり馬鹿なのかな」
「…フェイトちゃん、どうしてそうなるのかなぁ?」
「せ、せや。大体フェイトちゃんは魔法とかに関してはうちらよりずっと上やんか」
「それは…それが仕事、って言うか母さんのためにって言うか…」
「……」
「……」
「……」

しばしの沈黙
最初に口を開いたのははやてだった
「そ、そや。みんなで七夕パーティーやらん?笹の葉や短冊も用意して」
「そ、そうだね、アリサちゃんたちも呼んでパーっとやろう」
「えと、短冊と笹の葉ってどうして?」
まだすべてを知らないフェイトは当然のように二人に問いかけた
「ああ、そういえばそれの説明しとらんかったな」
「えとね、七夕の日に短冊に願いを書いて笹の葉に吊るすと叶うって言われてるんだ」
「ほ、ほんとに?」
「まぁ、実績のほうはどうか分からんけど…昔からそう言われとるな」
「そうなんだ…」
「というわけで、明後日は七夕パーティーに決まり」
「よっしゃ、ならうちは料理を担当しよか」
「じゃあ、私は飾りつけ」
「私は……みんなに話す係り」
「なんや、一番楽そうやな」
「にゃはは…だってそれくらいしかやること残ってないもん」
「確かに」
なのはの言葉に三人は笑った


そして七夕当日

「こんちわー、来たわよなのは」
「おじゃまします」
「アリサちゃん、すずかちゃんいらっしゃい。みんな来てるよ、あがって」
そう言ってなのはは二人を居間に通した
「集まってるー?……て、こんだけ?」
「にゃはは、みんなちょーっと都合が悪くて」
「ま、まぁ、大丈夫だよ」
「そりゃ、別に誕生会をやるわけじゃないけど…」
そう言ってアリサは居間を見渡す
そこには今日の七夕パーティーの参加者一同がいた
といっても、アリサたちを含め6人しかいない
ありさとすずか、なのはにはやて、そしてフェイトにクロノ
言ってみれば未成年組みだ

「あれ?ユーノは」
「あ、ユーノ君はお仕事。レティ提督に頼まれてたやつが残ってたんだって」
「エイミィさんは?」
「エイミィもお仕事。リンディ母さんと」
「じゃあ、もしかしてシグナムさんたちも」
「せやね、仕事や。ホンマはうちもやったんやけど、みんながせっかくなんだからこっちは任せてって言うてね」
「そうなると、恭也さんたちも?」
「うん、七夕だし、そういったメニューとかもあるから結構お客さんが入るんだ」
「ふ〜ん、やっぱ大変なんだ」
なのはの言葉にアリサは少し感心したようにつぶやいた
「…それはともかく、早く始めないか?」
「あ、そうだね」
「せやな、料理も冷めんうちに食べたほうがおいしいし」
「じゃあ、はじめようか」
こうして、七夕パーティーが始まった


あらかた料理も片付き、夜も更けてきた
「さて、それじゃそろそろやろか」
「そうだね」
「そういえば笹は?用意できたの?」
「まぁな、グレアムおじさんに聞いたらちょうどいいのがあるて送ってくれたんよ」
そう言ってはやては外を指差す
外には立派な…軽くなのはの家を超えるくらいの笹があった
「…これは、なんとも」
「お、おっきいね」
「私もそう思う」
「そうか?うちは別にいいと思うけどな」
「まぁ、大きさはとにかくさっさと願い事書いちゃいましょ」
「そうだね」
そう言ってなのはは短冊とペンをみんなに配っていく

「さて、何を書こうかな」
「私は……みんな仲良くいられますように、かな?」
「すずかちゃんらしいね」
「そやね、じゃあうちは……一流の漫才師!」
「え?漫才師?管理局のお仕事は?え?え?」
なにやら本気で慌てるなのはに一同は大笑いした
「え?な、なに、私何か変なこと言った?」
「あはは、ううん、そやないそやない…まさかそないなボケをかましてくれるとは」
「く…なのはって、天然ねぇ」
「だ、だめだよ笑っちゃ…なのはちゃんは真剣なんだから」
と、言いつつすずかも笑いをこらえているようだ
そして当の本人は何がおかしいのか分からず、頭上を?が飛び交っていた


と、そんなにぎやかな面々とは少し離れたところで
クロノとフェイトは静かに願い事を書いていた
「…クロノはなんて書くの?」
「ん?…まぁ、適当にな」
「なんか、気になる言い方だね」
「そんなことはない…じゃあ、フェイトは?」
「え?」
「フェイトはなんて書くんだ?」
「え?あ、と…その……」
予期せぬカウンターに、フェイトはしどろもどろになる
「はは、だろ?まぁ、こういうのは思ったことを素直に書けばいいのさ」
「素直に?」
「そう、別に願いが叶うからやるのではなくて…何というか願掛け、かな?」
「それは、神社とかでやることじゃないの?」
「そうとも限らないさ、自分の大切なものを持って試験に行く、なんて立派な願掛けだろ?」
「あ、そういうことなら、そうかも」
「だから、人の書いているのなんて気にせず、自分の好きなように書けばいいのさ」
「…そっか、そうだね」
クロノの言葉にフェイトはうなずく

そして、それぞれが願い事を書いた紙を笹に吊るす

「これって、高ところのほうが叶うって言われてるよね?」
「空から見やすい、ってことなのかな?」
「ほらほら、アリサちゃんもすずかちゃんもそない考えんでもええやろ」
「ま、それもそうね」
そう言ってアリサはさっさと手近な笹に吊るす
「フェイトはなんて書いたんだ?」
「他人のは気にしないって言わなかった?」
「いや、まぁ…そうなんだが……」
(やはり兄としては気になるというかなんと言うか)
と、そんなクロノの葛藤も知らずフェイトもさっさと笹に吊るす

その後もなんやかんやと話しをしてお開きとなった

「楽しかったね」
「うん、そうだね」
家が近くのフェイトはみんなが帰った後もなのはとおしゃべりをしていた
ちなみにクロノはさっさと家に帰ってしまった
「そういえば、フェイトちゃんは短冊になんて書いたの?」
「え?なんで?」
「いや、なんかクロノ君と話してたみたいだから、ちょっと気になって」
「別にたいしたことじゃないよ、何を書こうか迷ってて、好きに書けば?って」
「あはは、クロノ君らしいというかなんというか」
そう言ってなのはは微笑む
「じゃあ、なのはは?すぐに書いてたみたいだけど?」
「え?いや、私も普通だよ、うん」
「じゃあ教えてよ、いいでしょ?」
「ええ?なんか恥ずかしいな」
そう言いつつもなのははそう嫌そうではない
「えっとね…フェイトちゃんとずっと仲良しでいられますように、って」
「なのは…」
「にゃはは…やっぱ恥ずかしいね……次はフェイトちゃんの番だよ?」
「え?私も言うの?」
「当然だよ」
「う〜〜」
まぁ、自分がいったのだからあなたも、というのは別におかしくはない
だが、先に言いたいことを言われては恥ずかしいというより、いまさらという感じがして
言いづらいのだ
「……やっぱりやめた」
「え〜?フェイトちゃん、それはひどいよ〜」
「だめ、言わない。いまさら恥ずかしい」
「フェイトちゃ〜ん」
「気が向いたらそのうちね」
「ぶぅ…」
フェイトの言葉になのはは頬を膨らます
「あはは、なのはハムスターみたい♪」
「うにゃ?!そ、そんな顔してた?」
「してた。ぷくー、って」
「あぅ、は、恥ずかしい」
「あはは」

そんなこんなで夜は更けていく


庭の笹にはたくさんの短冊が吊るされている
風に揺れ、まるで音楽を奏でるように…

その中のひとつ、黄色の短冊が空に舞う

それはまるで羽ばたくように夜空へと舞い上がる

その願いを天へ届けるかのように……



”なのはと、ずっと一緒にいられますように”




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あとがき
 はい、というわけで七夕のお話です。
実のところ一昨日に気づいて書き始めたせいで、まとまりがないような気がします……
ちなみに、最後”お兄ちゃんとずっと一緒にいられますように”と締めようと考えていたんですが
流れ的に上のようになりました(笑)






 
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