心の夢


  







私は夢を見ている
普通夢を見ているかどうか判断することは難しい
だが、これは夢だと断言できる

だって・・もう二度と会うことのできない大切な人たちがいるから・・・・・



扉を開け中に入ると一人の女性が気づき、声をかけてきた
「あら、おはようフェイト。今日は早いのね」
「・・・おはよう、母さん」

プレシア・テスタロッサ。私の・・母さん
最後まで微笑みかけてはくれなかったけど、わたしの大好きな・・・母さん

挨拶を終え、フェイトが席に着こうとしたとき
思い切り扉を開けて一人の女性が入ってきた

「大変です、プレシア!フェイトがい・・・ます・・ね」
「おはよう、リニス」
「あ、えと、おはようフェイト。今日は早いんですね」
「母さんにも言われた」
「そうですか・・」

彼女はリニス。母さんの使い魔で私の教育係
バルディッシュを作って、私に魔法を教えてくれた師匠といえる人
でも・・・いつの間にかいなくなってしまった

「しかし、驚きました。二人を起こしにいったらフェイトだけいないんですから」
「それじゃあ、アリシアはまだ寝てるのね」
「ええ、今から起こしてきます」
そういってリニスは寝室へ入っていった

「フェイト、立っていないで座ったら?」
「あ、はい」
プレシアの言葉に従ってフェイトは席に着いた
「そういえば、魔法はどのくらい覚えたの?」
「えと、雷系は・・一通り。今は補助系を勉強してるところ」
「そう、すごいわね。もう雷系を一通り覚えたの」
「うん、でもまだいくつか習得してないのもあるから」
「熱心ね・・でも、そればかりにかまけていては駄目よ」
「え?」
「たまには気分転換をしなきゃ・・そうだ、今度みんなでピクニックにでもいきましょうか」
そういってプレシアは手を叩いた
「どう?フェイト」
「・・・・うん」

「ほら、アリシア、もうフェイトは起きてますよ」
「んにゅ・・・」
声のしたほうを見てみるとリニスにつれられてパジャマ姿の少女が部屋に入ってきた
フェイトとそっくりの容姿をしている

「ほら、アリシア。お姉さんなんだからちゃんとしなさい」
「そうですよ、今日フェイトは一人で起きたんですから」
「え?嘘。フェイトが一人で?」
そういって少女、アリシアはフェイトを見た
「おはよう、アリシア」
「・・おはよう、どうしたのフェイト?いつもは私より寝起き悪いのに」
「今日はたまたま早くに目が覚めただけだよ」
「本当〜?」
「うん」

アリシア・テスタロッサ。母さんの本当の娘で私にとってはお姉ちゃんになる
彼女には、感謝してもしきれない。彼女がいなければ自分はこうして存在していられなかったのだから

「さ、話はあとにして、朝ごはんを食べてしまいましょう」
「そうね、アリシア、フェイト」
「は〜い」
「・・はい」

朝食を食べ終えたあとリニスとアリシアは勉強だといって部屋に戻った
アリシアはかなり嫌がっていたが・・・
「あの娘は、もう少しフェイトを見習ってほしいわね」
「そんな、私に見習うところなんて無いよ」
「そんなことないわ、だってこんな短期間に雷系魔法を覚えたんですもの。よほど努力したんでしょう?」
プレシアは微笑みながらそういった
「・・うん、でも私が勝手にやったことだから」
「それが大事なの。勝手にって言うけど、やる気がなければできないことよ」
「・・・・」
「フェイトのいけないところはそこね」
「え?」
「もっと自分に自信を持ちなさい。あなたはそれだけの努力をしているんだから」
「でも・・・私は」

「・・・フェイト」
「あ・・」
静かに、そして優しくプレシアはフェイトを抱きしめた
「母・・さん?」
「・・ごめんね、フェイト」
「え?なにが・・」
「私はあなたに、とてもひどいことをしたわね」
「?!」

違う。これは夢、私の見ている都合のいい夢
だから、これは私が勝手に想像しているありもしない言葉
そう・・・・夢・・なんだから

「夢、って思ってる?」
「え?」
「確かにこの世界は夢よ。でも私の意志は本物」
「そ、そんなこと・・・あるはず」
「あなたがあんなことをした私をずっと想ってくれたから、だから謝りに来たの」
「・・・・・」
「あのときの私はホントにどうかしてたわ。フェイトはこんなにかわいい娘なのに叩いたりして」
そう言ってプレシアはフェイトの髪を優しくなでた
「母・・・さん」
「許してもらおうとは思わないわ・・それだけのことをしたのだから」
「・・・」
「ただ、許されるなら、この時だけは母親でいさせてくれない?」
プレシアのその言葉に今まで堪えていた涙がフェイトの頬を伝った
「私・・こそ・・・いいの?母さん、って呼んで」
「あなたがそう呼んでくれるのなら、私は喜んではい、と答えるわ」
「・・母さん・・・母・・さん・・」
「泣かないで、フェイト。あなたには笑顔が似合うわ」
「ぐす・・母さん・・私・・期待に応えられなくて・・・ごめんね」
「そんなことないわ、あなたは十分応えてくれたから」
「私・・う・・わがままで・・ごめんね」
「もぉ、そんなことないわ、フェイトはとても素直でいい娘だった」
「うぅ・・・私・・・私・・」
「いいのよ、フェイト。もう気にしなくていいの」
そういってプレシアは優しく、壊れ物を扱うような仕草でフェイトの頭をなでた
「・・・・」
「・・・・」

温かい、とても・・安心する
これが夢かそうでないかなんてどうでもいい
今だけは、このぬくもりに包まれていたい

「・・母さん」
「なに?フェイト」
「高町なのはって娘がいてね、私、その娘に助けられたんだ」
「・・そう」
「今の母さんみたいにとても温かくて、側にいると気持ちが安らぐんだ」
「大切なのね、その娘のことが」
「うん、はじめて友達になりたいっていってくれたんだ」
そういって話すフェイトの顔はどこか誇らしげだった
「いいお友達に出逢えたのね」
「うん・・・母さんに紹介したかったな」
「・・・そうね、母さんも会ってみたかったわ」
と、そこで不意にフェイトの目の前が揺らいだ
「あれ?」
「・・どうやらお別れのときみたいね」
「え?」
「目覚め始めているのよ」
「じゃあ、もう一緒にいられないの?」
「・・ここは夢の世界、嘘と真の境界線」
そういってプレシアはフェイトから離れる
「ここに留まれるのは肉体を持たない意思の存在だけ」
「・・・」
「さぁ、戻りなさいフェイト。あなたには戻る場所、待っている人がいるでしょう?」
「母さん・・」
だんだん周りの景色が白く消えていく

「・・ごめんね、フェイト。最後まで母親らしいことをしてあげられなくて」
「・・・ううん、そんなことない」
プレシアの言葉にフェイトは首を横にふった
「母さんのおかげで私はここにいる。母さんが私を造ってくれたからなのはたちと出逢えた」
「だから、ありがとう母さん・・・・大好きです」
その言葉を最後に、フェイトは現実へと戻っていく
そんなフェイトを見送るプレシアは目の端に涙を浮かべ微笑んでいた



「・・ん・・」
目を開けるといつもと少し様子が違っていた
「・・・そうか、今日はなのはと」
「あ、フェイトちゃん起きたんだ」
声をしたほうを向くとトレイにジュースとお菓子を載せたなのはが立っていた
「ごめん、なんか寝ちゃってたみたいで」
「ううん、気にしないで。クロノくんに聞いたけど最近忙しいんでしょ?」
「うん、すこし」
「だったらしょうがないよ、あ、寝起きだけどお菓子どう?翠屋のシュークリーム」
そういってなのははトレイをフェイトの前においた
「うん、食べる♪」

その後シュークリームを食べ終えたフェイトがなのはに問いかけた
「ねぇ、なのは。かあさん、プレシアは本当に悪いのかな?」
「・・私は、どっちでもないと思う」
「え?」
「だって、もともとは家族のためだったんだし」
「・・・」
「でも、そのために人を巻き込むのはよくないと思う」
「・・そうだよね」
「だから、一概に悪いって決め付けるのよくないんだと私は思うよ」
なのははそういってフェイトの手を握った
「フェイトちゃんにとって、大切な人なのは変わらないんだし」
「なのは・・・」
「だから、フェイトちゃんが納得できる答えが本当だと思うよ」
「・・・・ありがと、なのは」
「にゃはは、お礼なんていいよ。私たち友達でしょ」
「そうだね・・ねぇ、なのは。これからも友達でいてくれる?」
「もちろんだよ♪というより嫌って言ってもやめないから」
そう言ってなのはは微笑んだ



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あとがき
 というわけで、やけに妄想気味なssです。
これを書くきっかけはふと思いついたからです〈笑〉
まぁ、いろいろとツッコミどころはあるかと思いますが
楽しんでいただければ幸いです。



 
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