剣として盾として


  




「ありがと、お姉ちゃん」
「次からははぐれぬようにな」
「うん♪」
少女はそう言うと駆け足で母親の元へ向かった
少し目を離した好きに迷子になってしまったらしく、偶然通りかかったため保護したのだ
それから数十分後同じように探していた母親を見つけたというわけだ
「しかし、この私がこのようなことをしていようとはな」
そうつぶやいた女性、シグナムは空を見上げた
「蒼いな・・・」

戦い・・
それが自分の存在意義であり、在るべき場所だと思っていた
自分がいるのは主を守り、敵を切り、すべての災いを断つことにある
そう信じ、そしてそのために身を投げ出してきた
自分は戦いでしか存在意義を・・・いや、利用価値を持たない
「そうだ、それが私、シグナムという騎士なのだ」
しかし、此度の主は違った
自分に戦えとも、命令もせず、それどころか自分のことを気にかけ世話を焼こうとまでするのだ
それが気になり尋ねたこともあった。しかしそのたび決まってこういうのだ

『うちがしたいからする、それだけや』

と、正直なところその時は意味が分からなかった。なぜなら自分は剣であり道具なのだ
道具を磨く者はいても大事にする者などいない、所詮は消耗品なのだから
そして、それについても尋ねたことが一度だけあった
「そう、そしてその問いの答えは・・・・」


「ただいま戻りました」
「あ、お帰り、ご飯もう少しでできるからちょお待っとって」
「やっと帰ってきた」
「ヴィータ・・」
「シグナムがなかなか帰ってこないからご飯が遅くなったんだぞ」
「・・ヴィータ」
「分かってるよ、ザフィーラ。別にはやてが決めたことに不満なんてないよ」
「・・・・」
台所を見るとはやてが楽しそうに料理をしていた


コンコン
はやてが就寝前の読書をしていると不意に扉を叩く音がした
「だれ?」
「シグナムです」
「なんや、シグナムか。どうしたん、入ってきたらええよ」
「失礼します」
シグナムはそういって静かにはやての部屋へ入った
「・・・」
「何か悩み事?」
「いえ、そうではありません」
「?」
「あの・・お願いがあるのですが」
「なんや?うちでできることならええよ」
「その・・・今日だけ隣で寝ても良いでしょうか」
「へ?」
「あ、もちろん床でかまいません」
そう言うとシグナムはうつむいてしまった
光の加減でよくは見えないが少し顔が赤いような気もする
そんなシグナムを見ているとはやては少し嬉しい気持ちになる
正直ほかの3人と違ってシグナムは少し遠慮しているように見える
もちろん自分のことを大切に思ってくれているのは分かる
でもだからこそもっと近づいて欲しかったのだ・・・・だから今かける言葉は一つだけ
「うん、でもどうせなら一緒に寝よ」
「え?・・・は、はい」
二人でベッドに入る。もともと一人用なので少し狭い
「ふふ、ちょお狭いね」
「すみません」
「・・・ねぇ、シグナム」
「なんですか?」
「もうちょい気軽に話すことできんの」
「え?変・・ですか」
「そうやなくて、前にも言ったと思うけど家族だって思ってるから」
「あ・・」
「もちろん、無理にとはいわへん・・ただ、できればもう少し・・な」
「・・・・」
そうだった、そういわれたのだ。こんな私を”家族”と・・・ならばそれに答えることが私のできる最大の感謝の証だ
「・・努力します」
「うん、それじゃあそろそろ寝よか」
「はい」


『なぜ、私を剣として扱わないのですか?』
『シグナムがどう思ってるか知らんけどな、私は家族やて思ってる。もちろん他のみんなもな』
『家族を道具としてなんて扱えるわけないやろ?』


(私の問いにそういって、微笑んでくれたのだ)
「すぅ・・・すぅ・・」
「・・・・」
今となりで静かに寝息を立てている少女を守りたいと心から思った
そしてあの日、私を家族と呼んでくれた瞬間から私の存在理由が変わった
私の存在理由、それは主の剣となり盾となって戦うこと・・・しかし今は違う

「私の存在理由、それは・・”家族”として彼女のそばにいること」

そしてこの命尽きるまで彼女の剣となり盾となろう
彼女が私を、私たちを必要としなくなるまで・・・・・



おしまい



あとがき
 というわけで魔法少女リリカルなのはA'Sからシグナムのssです。まぁ、内容としては
シグナムの心境を描いたつもりです(実際はどうか知りませんが)
半分思い付きで書いたようなものなのでまとまりがないような気もしますが
とりあえず魔法少女リリカルなのはA'Sssの最初ということで大目に見てください(笑)


 
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