納得のいく形


  

これは闇の書事件より1年後のお話
ひょんなことからアルフとザフィーラが男女の仲になったお話

12月24日
クリスマスイブ、人々はそのイベントのために
プレゼントを持って家へ、想いを告白するために待ち人のもとへ
そんな日の昼下がり

「いやぁ、寒くなったねぇ」
「…うむ」
はやて家の庭に二匹の犬…もとい、狼がいた
アルフとザフィーラだ
「それにしても、いろいろとあったねぇ」
「…そうだな」
「あのさ、ひとつ聞きたいんだけど」
「…なんだ?」
「その三点リーダ何とかなんない?」
「…仕様だ、あきらめろ」
「だってさ、なんかイライラすんのよ、わかんないけど」
そう言ってアルフは憤りを表現する
といっても、動物形態なのでせいぜい地団太を踏む程度だが
「…もとよりこうなのでな、仕方ない」
「そこを何とかしようって気になんないのかい?」
「無理だ」
「…なんでそこだけ三点リーダ省くんだよ」
「…仕様だ」
「あんたさっきからそればっかだね、基が基だって知ってっけどさ
少しは努力しようとしなよ」
「…なぜ、急にそのようなことを言う」
「え?」
「…俺は以前からこうだが、そのときは何も言っていなかったではないか」
「そ、それは、そう…だけどさ」
そう、どういうわけかそれまで気にしていなかったことを気にするようになった
なぜか、と問われれば…思い当たるのはひとつ
(あの夜、からだよな)

思い出すのは半年前のこと
あの日、どういうわけか無償に自らを責めたい気分になった
理由はわからない、いや、わかっている…フェイトだ
彼女が執務官を目指すといい訓練に励んでいたとき
魔法の暴走により、深手を負った
傷はかなり深く、一時昏睡状態にまで陥ったこともあった
無論、フェイトはそれを乗り越え執務官への道を歩むことになったが…
そのとき、自分が何もできないことを無償に腹立たしく思ったのだ
そんな時、ザフィーラがそばでただ居た
特に何か言葉をかけるでも、去るでもなく、ただ”居た”のだ
そんなザフィーラにアルフはその思いのたけをぶつけた
そして…

(うう、今思うとなんてことしたんだ、あたしは)
「…どうした、顔が赤いが風邪か?」
「なっ?!」
突然ザフィーラの顔がアップになり、アルフは驚いた
「な、なななななんでもないよ!」
「?ならばいいが、気をつけろよ体を壊しては主を護ることなどできんからな」
「わ、わかってるさ」
(んだよ、あたしの心配はしてくんないのか)
「…それと、だな」
「なにさ」
ザフィーラは少々言いよどんだが、はっきりと
「お前が体を壊すと、心配だからな」
「え?」
「べ、別に他意はない…なんとなく言っておきたかっただけだ」
そう言ってザフィーラはそっぽを向く、しかしその顔は真っ赤になっていた
「…はいはい、どこかの誰かさんが心配しないように配慮しますよ」
「な、ならばいいのだ…別に」
(ったく、素直じゃねぇんだから)

そして夜

「…なぁ、どう思う?」
「…なにがだ」
「この状況だよ」
そう言ってアルフは机の上の紙を指す
そこにはフェイトの字でこう書かれていた

”はやてたちとクリスマスパーティをしてきます
 アルフはザフィーラと仲良く過ごしてね”

「…気を使った、ととるべきか?」
「おそらくはやてが言ったんだろうね」
アルフの言葉にザフィーラは無言でうなずく
「…はぁ、どうする?」
「…どうもこうも、主はやてたちがいないのならば留守を預かるしかあるまい」
「そういうことじゃなくてだね」
そう言うとアルフはザフィーラに一言
「あたしらの関係、というかなんと言うか、に気づいてるよ」
「………あ」
どうやら、ザフィーラはアルフに言われるまでその事実に気づいていなかったようだ
「しかし、いつだ?」
「さぁね、でもはやてはこういったことにやけに鋭いからね
 あたしたちが気づかないとこで気づいたのかも」
「…ありえるな、主はやてはそういったことに関して気を配ることのできるかただ」
「で、どうすんだい?」
「…何がしたい?」
「は?」
「…いや、俺はこれといって何をするとか思い浮かばんからな」
「なにさ、そういったことを女に決めさせる気かい?」
「…では、俺がすることをやれるというのか?」
「…」
思案中…
「だめ!あたしにあんなことできない」
「…ちょっと待て、今なにを考えた」
「んなのどうでもいいだろ…よし、決めた」
「…個人的にどうでもよくないのだが」
「ほらほら、こっちこっち」
「…」
いぶかしげな表情のザフィーラだったが
特に拒む理由もないので言うとおりに移動する
「ほい♪」
「?!」
突然アルフがザフィーラに抱きついた
ちなみに人型で
「な、何を突然?!」
「嫌かい?」
「…むしろ嬉しいが」
「なら問題ないね♪」
「…」
そういて笑顔を浮かべるアルフにザフィーラは何も言えなかった

それから数時間

「…なぁ、あんたどうなのさ?」
「…なにがだ」
「あのときのことさ、なんとも思ってないのかってこと」
「…なんとも、とは思っていない…だが、大事なのはお前だ」
「あたし?」
「…正直なことを言えば、あまりいい気はしない」
「…」
「だが、おまえ自身があのことを、そしてその後のことをどう考えているか
…それが一番大事なことだ」
「……」
「…」
しばしの沈黙、そしてアルフがポツリと
「…責任を取って、って言ったらどうする?」
「…それを望むならな」
アルフの言葉に、ザフィーラはそう言った
「無責任だね、任せろとか言えないのかい?」
「…お前がそれで納得できるのか、と言うことだ」
「え?」
「…お前は情けで何かを手に入れたいと思うのか?そのときの感情で致したことに
責任を取れ、と…それで、納得がいくのか?」
「…」
「…お前が望むなら、俺は護り続ける…だが、それは真に自分自身に納得のいく形で、だ」
「ザフィーラ…」
「…時間はある、今はこのままでいいのではないか」
「…そうだね、それでいいのかもしれない…待ってて、くれるのかい?」
「…お前が納得のいく形でないのでは、意味がないからな…待つさ」
「ふふ、顔赤いよ」
「…うるさい」
「あはは♪」

もう答えは出てる
でも、今はそれではいけない気がする
このまま受け入れれば、逃げることになるから
それはあいつも、そして何よりあたし自身が許せないから
だから、今はこのままこのときを…
でも、いつかは伝える、この気持ちを

「大好きだよ、ザフィーラ」




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あとがき
 はい、何とか書き上げましたアルフ×ザフィーラ
最後のほうどっかで見たなぁ、って思うでしょうが…スルーの方向で(笑)
正直この二人ってむずいんすよ、設定も少ないし
しかし、だからといって無下にはできませんからねぇ…がんばりました
つーわけで、楽しんでいただけれ幸いです♪






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