それは悲しい願いなの


  

第1章 ディメンションジュエル




翌日

シグナムたちの怪我もかなり回復して、なにがあったのかを聞くことになった
ちなみに、当然のことながらなのはもいる
そして、全員がそろったことを確認して、クロノははやてに話しかけた


「さて、それじゃ話してくれ、いったいなにがあったのか」
「まぁ、ほとんど知らんゆうても良いくらいやけどな」
クロノの言葉にはやてはそういって話し始めた
「ほぼすぐやな、一人の男と会ったんよ」
「男?」
「・・騎士だといっていた。名はアルベルト」
「だけど、話も聞かずに去れ、だぜ?、なに考えてんのかわかんねぇよ」
「でも、少なくとも力はあるわ」
「うむ」
「そやな、うちらがあっという間やったもんな」
はやての言葉に騎士たちはうなだれた
「すみません、我らがいながら」
「ごめん、はやて」
「本当に、護るべき騎士が護られるなんて」
「・・面目ない」
「ああ、そやない、みんなはようやってくれたよ」
はやてはそういって騎士たちを慰めた
「つまり、それほどの実力者ということか・・」
「まぁ、確かに実力はあるんやけど・・・」
「・・なにかあったのか?」
クロノの問いにはやては少し戸惑いながらも、気にしていることを話した
「何や、似てる気がしてな、うちらと」
「似てる?」
「はっきりとは言えないんやけど、雰囲気いうんかな、他人とは思えんくて」
「・・・・」


その後、いろいろと話し合った結果
今一度調査してみようということになり、当然ながらはやて、なのは、フェイトの三人が選ばれた
「とりあえず今回は調査だけだ。それ以外のことはできるだけするな」
「うん」
「わかった」
「了解や」
「んじゃ、いくよ」
エイミィの言葉と同時に転送陣(瞬間的に場所を移動できる装置)が作動し三人は消える
そして、なのは達はアディットへと転送された



「ここが、アディット」
「・・いいところだね」
「そやな」
はやてがそういって周りを見ると
「あ・・・」
「どうしたの?はやてちゃん」
三人の目線の先、一人の女の子がいた



「遅いなー、アル」
後で行くって言ってたから大丈夫だろうけど
時々アルは約束忘れるからなぁ・・・
「どうしよう、一度戻ったほうが良いかなぁ?」
「あの、ちょっといいかな?」
「え?」
帰ろうかどうか考えていると、不意に後ろから声をかけられた


「えと、初めまして、私高町なのは」
「フェイト・T・ハラオウン、よろしく」
「八神はやて、よろしゅうな」
「・・・・」
いきなりの自己紹介に少女は少し戸惑いながら
しかし、黙っているのは失礼と思ったのか同じように自己紹介をした
「アリッサ・フランベル」
「アリッサちゃん・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「?」
しかし少女、アリッサが自己紹介すると三人は少しの間黙ってしまった
「どうか、したの?」
「え?ああ、ううん。なんでもない」
「そう、なんでも」
「気にせんといて」
「??」
ますますわけが分からないという感じでアリッサはさらに首をかしげた

《ねぇ、すごく初めての気がしないのは気のせい?》
《私もそう思った》
《というより、本人ちゃうの?》
《さすがにそれはないと思うけど》
《性格も違うみたいだし》
《そやね、どっちかいうとすずかちゃんみたいな感じやし》
と、そんな話の最中に違う声が混ざった
《懲りないのだな・・・》
「?!」
《隣の二人も同じか・・・》
《・・あなた、誰ですか?》
《・・・そちらのショートの娘なら知っているだろう》


その言葉と同時になのはたちの前に一人の男が現れた
「アル、遅刻だよ」
「すみません」

《はやてちゃん》
《・・昨日うちらがあった男や》
《じゃあ、彼がシグナムたちを》

「あ、そうだ、紹介するね、アル。私の保護者みたいなものかな」
「・・はじめまして」
「あ、えと、どうも、高町なのはです」
「・・フェイト・T・ハラオウン」
「八神はやてや」

《お前たちがなぜここにいるかは大体想像はつくが》
《そやから、うちらはあんたらに危害は加えんゆうとるやろ》
《そうだよ、私たちはただ、調べることがあるだけで》
《・・・・》

「・・アル、どうかした?」
「え?あ、いえ、なんでもありません」
「?」
と、そこでなのはが口を開いた
「えと、私たちそろそろ帰ります」
「え?そう、もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「ごめん、でも用事もあるから」
「・・そやね、ここら辺で」
そういって三人は立ち上がった
「じゃあ、もし今度来ることがあったら家に寄っててよ」
「うん、ぜひ」
「それじゃ」


その後、アースラへ帰還したなのは達は
アリッサたちのことをクロノに話した


「そうか・・少々厄介だな」
「そやけど、何や悪い予感がするんや」
「悪い予感?」
「なんか、取り返しのつかないような事態になるかもしれんような気が・・・」
そんなはやての言葉にクロノは真剣になって告げた
「・・・その予感は当たるかもしれない」
「え?」
「実はユーノから気になる資料を送ってもらったんだ」
クロノはそういって一枚の新聞を取り出した
「これは今から50年位前、アディットで起きた事件の記事だ」
「疫病、呪いか?無傷な死体の山?」
「死者、1万人?!」
記事の内容を読んでいたなのはとフェイトは驚きの声を上げた
「これはこれでひどい事件やけど、これと今回のこと関係あるん?」
「ああ、当初は疫病の類だといわれていたが魔法によるものであることが分かった」
「魔法?」
「それも、ロストロギアだったらしい」
「?!」
クロノの言葉になのはたちは息を呑んだ
「ロストロギアの名称は”ディメンションジュエル”。ただ、その特性から”デーモンズジュエル”とも呼ばれている」
「特性?」
「そうだ。ディメンションジュエルの力の源は”命”」
「命て・・!もしかして」
「そうだ、これはそのディメンションジュエルが発動したものだ」
クロノはそういって先ほどの記事をさした
「そして、これが発動した場所は先ほど君達が行ったあたり」
「・・ちょお待って、じゃあ」
話の流れからとてつもなくあって欲しくないことになりそうだ・・・そしてその予感は的中する
「そのとおり、あの地方で感知された魔力は十中八九これに間違いない」


その後、もう少し詳しいことをユーノに調べてもらい
ディメンションジュエルの概要が分かった

「つまり、話を統合すると・・」
「ディメンションジュエル自体に魔力はなく、外部から補充する」
「発動するためには人、動物、どちらかの血液を一定量与える」
「その後、願いを込め命を捧げる」
「で、間違いないか?ユーノ」
《ああ、それで間違いはない》
「・・・なんや、嫌な宝石やな」
「うん、何でそんなもの作ったんだろ」
「・・・・」
「願いを叶えるため、だろうな」
そういってクロノはうつむいた

無理もない、ここにいるみんなは命の尊さをよく知っている
命がどれほど大切で、そしてどれほど儚いのか・・
なのに”命を捧げる”などと言われればどうしてもうつむいてしまう
しかし、そんななかはやてだけは違った
「そやけど、打つ手がないわけやない」
「はやてちゃん?」
はやては決意のこもった目で続けた
「うちらの攻撃が効かんバケモンやないし、話のできない相手とちゃう」
「・・・はやて」
「せやったら、できる限り説得すればええやん」
「・・そうだな」
「うん、まずは話さないと始まらないよね」
「そうだね、まずは話すことから」
「確かに、はやての言うとおり相手は人間だ、話して分からないことはない」
はやての言葉にみんなは強くうなずいた、ただ一人を除いて・・・
《・・なんか、僕だけ除け者のような気がするんだけど・・》
そう、一人この場にはいないユーノ君だ
「そ、そんなことないって、ユーノ君のおかげでいろいろ分かったんだし」
「そ、そうだよ、ユーノは十分役に立ってるよ」
「そ、そうや、大体縁の下の力持ちゆう言葉もあるし」
なのは達はユーノを励まそうとフォローする。しかし・・
「・・三人とも、そういうのはフォローにならないぞ」
「え?」
クロノの言葉に耳を澄ますと・・
《・・いいよ、どうせ僕なんて脇役なんだ、本編でもほとんど活躍してないし》
「・・・ユーノ君・・」
《大体、一期のほうでもあまり出てこないし》
「・・えっと・・」
《クロノにはフェレットもどきとか使い魔とか言われるし》
「・・いや、それは・・・」
《その上新キャラが一気に増えたからさらに影薄くなったし・・》
「・・あはは・・」
と、ユーノの愚痴はその後2時間の間続いた・・・・



PM:18:00 アディット ヴリュン地方 某所

「ごちそうさま」
「はい、お粗末さまです」
アルはそういって空になった皿をさげた
「ねぇ、アル」
「なんですか?」
「昼間のコたちと何かあった?」
「・・・なぜ、そう思うのですか?」
「なんとなく、なんか居心地悪そうだったから」
アルの問いにアリッサはそう答えた
「・・・・・・」
「・・・・」
「・・なんでもありません」
「・・・」
長い沈黙の後、アルはそう答えた
「主が心配するようなことは何も・・・!」
「・・・ホント?」
しかし、アルの答えにアリッサはそういって抱きついた
「別に嘘をつくのが悪いとかは言わない、ううん、言いたくなければそれでいい・・・ただ」
「・・・・」
「いなくならないでね、ずっと・・側にいてね」
「!?」
わずかに、心が揺らいだ。これから自分がしようとしていることは今の言葉を否定することになるのだ
(・・本当はこのままのほうがいいのか?・・・)
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらく無言の時が流れる・・・そして・・・
「・・はい、私はずっと主の側にいます」
「・・・ホントに?」

嘘だと分かっていても、たとえ裏切ることになろうと、今だけは、今この時だけは
暖かな夢を見ていて欲しい・・・そう願い、静かに続きを口にする

「ええ。たとえなにがあろうと、たとえ見えずともいつでもあなたの側にいます」
「・・ありがと」
アリッサはそう言うと少し名残惜しそうにアルからはなれた
「それじゃ、おやすみ」
「はい、良い夢を」


「ふぅ・・」
アリッサはベッドに入るとひとつため息を吐いた
「そういえば、いつからだったかな・・・」
先ほどアルはずっと側にいるといった、しかしいつからそういう関係になったのだろうか?
「確か・・・まだ・・・小さい・・時・・に・・」
しかし、昼間の疲れのせいか、考えているうちに睡魔が襲ってきた
「・・・・・」


そして、アリッサは静かに瞳を閉じた・・・



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