それは悲しい願いなの


  

序章 始まりの鐘




それは小さな願いでした。
誰にでもある願い、しかしだからこそ誰も願わない
ううん、願わなくても手に入るもの
当たり前で、でもとても大切なもの
これはそんな小さくも大切なものを願った少女の
そして、そんな少女の願いを叶えるため悲しい選択をした騎士の物語

魔法少女リリカルなのはA'sアスターストーリー始まります。





それは遠い日の記憶
私が心を閉ざしていたころの記憶
誰も信じられず、ただ、無意味な日々を過ごしたころの記憶
でも、今は・・・・


「ん・・」
うっすらと目を開けると朝の日差しが差し込んで、朝だと認識する。
そしていつものように・・
「おはようございます。主」
「うん、おはよう。アル」
「少し顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
「うん、平気。ちょっと悪い夢見ただけだから」
「そうですか、では私は朝食の用意をしてきます」
そういってアルは部屋を出て行く
「さて、私も起きようっと」
そして今日も一日が始まる
いつもどおりの楽しい一日が・・・



AM 7:30 アースラ艦内

「せいっ!」
「あまい!」
ガキン、とふたつのデバイスがぶつかった
「・・クロノ、少し手加減して」
「それじゃ訓練にならないだろ」
そういってクロノはフェイトから距離をとった
「大体、君は手加減してやったら命が危ない」
「そんな、人を破壊魔みたいに」
「事実、君の魔力量は軽く僕を超えてるんだ」
そういってクロノは杖を構えなおした
「だから、それなりに本気でやらないと、怪我ではすまない」
「・・そうだね、んじゃ私も」
そしてフェイトも杖を構えなおした、とそこで訓練室に聞き覚えのある声が響いた
『クロノくん、フェイトちゃん、朝ごはんだよ』
「・・・」
「・・・」
「今日はここまでだな」
「そうだね」


闇の書事件から6年の歳月が流れた
クロノはアースラの艦長に
なのはは武装隊の教導官として
はやては守護騎士達とともに特別捜査官として
そしてフェイトは執務官として
それぞれに活躍している


「あれ?そういえばはやてたちは?」
食堂についてフェイトはそうエイミィに聞いた
現在アースラにははやてたちもいる
もともとはやてたちはレティ(前艦長リンディの友人)の預かりになっているのだが
訓練にはアースラの施設を使わせてもらっている
その関係上結構頻繁にはやてたちとは顔をあわせているのだ
「ああ、はやてちゃんたちにはちょっと偵察に行ってもらってるの」
「偵察?そんな話は聞いてないが」
エイミィの言葉にクロノは首をかしげた
「うん、あたしもついさっき聞いたんだけど、アディット方面に強い魔力を感知したらしいの」
「?アディット」
エイミィの言葉にフェイトは首をかしげた
「ああ、フェイトちゃんはまだあんまり知らないよね、アディットはね・・・」

エイミィの話ではアディットは自然の豊かな場所で、ミッドチルダにも劣らないくらいだという
その上比較的自然を壊さないよう配慮しているので条件としてはミッドチルダより上だそうだ

「そんなところがあったんだ」
「うん、特産品は野菜。自然に考慮して作ってるからすんごくおいしいの♪」
「へぇ〜」
「だけど、魔力が感知されたんだろう?あそこはそれほど魔法は使わないのに」
「うん、だからはやてちゃんたちに見に行ってもらったの」
「そうか・・ま、考えても仕方ない。はやてたちが戻るのを待とう」
「そうだね、はやてたちが戻ってくれば全部分かるし」
こうして、三人は少し気になりつつも食事を続けた


同時刻 アディット ヴリュン地方

「はぁ〜、こんな場所があったんや」
「はやて、はやて、今度は遊びに来ようよ」
「ええな、んじゃ頑張っておべんとつくらなな」
「やった〜♪」
「主、今はそんなことを言っている場合ではないでしょう、ヴィータも」
「わぁーってるよ」
「そやな、まずは魔力感知された場所を調べなあかんな」
はやてがそういって移動しようとしたときザフィーラが口を開いた
「・・誰か来る」
「え?」
確かに向こうのほうから人が歩いてくるのが見える
そしてはやてたちの前にやってくるといきなりこう尋ねてきた

「何者だ」
「・・いきなり失礼だな。普通は名を名乗るものではないか?」
「そうだ、そうだ。人にものを尋ねるときは自分から名乗るもんだ」
シグナムとヴィータの言葉にその人物は少し考えた後名乗った
「名はアルベルト。騎士だ」
「ほな、こっちもやな。うちは八神はやて。時空管理局の捜査官や」
「シグナムだ」
「ヴィータ」
「シャマルと言います」
「・・ザフィーラ」
はやてたちはそういって話を続けようとした・・・しかし
「去れ」
「・・いきなり去れとはどういうことだ?」
その言葉に少し怒りを含ませた口調でシグナムは問いかけた
そして返ってきた言葉は・・・
「言葉のとおりだ、去れ」
「ちょおまって、別にうちらはあんたらに危害を加えるつもりは・・・」
「・・意地でも去る気はないか」
彼、アルベルトはそう言うと手を空にかざした
「・・ヴリュンヒルデ」
そして、その言葉に呼応するように彼の手にデバイスが現れた
それはシグナムのレヴァンティンに似ているが少し違った
刀身が細いのだ、例えるならレイピアのような形状だ

チャキ!

「!?」
「では、力づくで出て行ってもらう」
そういって彼はヴリュンヒルデをはやてに向けた
「レヴァンティン!」
「シグナム?!」
見るといつの間にかシグナムの手にはレヴァンティンが握られていた
「理由はどうあれ、主はやてに刃を向けるなら私が相手になる」
「・・・・!?」
「ぶっこわせぇぇ!グラーフアイゼン!!」

ドカァァァン!!

「ヴィータ?!」
そしてヴィータの手にもグラーフアイゼンが握られていた

「・・・・なるほど、さすがというべきか」
「はん!負け惜しみはみっともないぜ」
「・・・そういうことはもっと大人になってから言うものだ」
アルベルトはそう言うと手を横に凪いだ
その瞬間ヴィータとシグナムの動きが止まった
「!?」
「な、これは!?」
「シグナム、ヴィータ!?」
いつの間に仕掛けたのか、シグナムとヴィータはバインドによって拘束されていた
「戦いとは駆け引きだ、あらゆる事態に応じれるよう二手三手先を読む・・・・・こんな風にな」
「?!」
「な?!」
そしてアルベルトが再び手を横に凪ぐとシャマルとザフィーラも同じように拘束された
「シャマル、ザフィーラ!?」
「そして、動きを止めればいかなる将とて倒すのはたやすい」
そう言ってアルベルトは手をかざした
「ライトニング」
その言葉とともに雷がシグナムたちに向かって堕ちた
「くぅぅぅ・・」
「うわぁぁぁぁ・・」
「きゃあぁぁぁ・・」
「ぬおぉぉぉ・・・」
「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!」
「・・・手加減はしておいた。死にはしないだろう」
「そんな、みんな・・」
はやてが驚くのも当然だ。いくら相手の力量がわからないとはいえ一瞬のうちに四人全員が倒されたのだから

「・・・・まだ、やるか?」
「・・・当然や、悪いけどここまでされたらいくらうちかて黙ってられへん」
そういってはやてはリインフォースを掲げた
「悪いけど、少し本気でやらせてもらうで」
「・・無理だ」
「なにゆうてん、まだやってもおらんうちから決めんといて」
しかし、はやてがリインフォースを構えなおそうとしたところで異変に気づいた
「?!まさか」
「そのとおり」
そしてその言葉と同時にはやてはバインドによって拘束された
「く、まさかこんな短時間で・・・」
「言っただろう?戦いは駆け引き、二手三手先を読むと」
そういってアルベルトはヴリュンヒルデをはやてののど元に突きつけた
「く、主」
「はやて・・・」
「はやて・・ちゃん」
「ぬ・・・」

「・・・・殺るなら好きにすればええ。そやけどあの子たちには指一本触れんどいて!」
「・・・・・」
(まっすぐで、純粋な瞳だ。真にあの騎士たちを想っていなければできぬ瞳だ)
「・・・騎士たちを連れて去れ。そうすればこれ以上危害は加えん」
そういってアルベルトはヴリュンヒルデを下ろした
そして同時にはやてを拘束していたバインドも解けた
「・・・なんでや?」
「・・無駄な争いは好まん。それに騎士たちの大事な主だからな」
「・・・・・」
はやての問いにアルベルトはそういい残し、去っていった


その後、はやてたちは何とかアースラへと帰還した
皆なにがあったのか聞きたかったが、騎士たちの傷はそう軽いものではなく
とりあえず傷を癒すのが先決ということで話は明日にということになった


いったいなにがあったのか、これからなにが起こるのか
そんな心配を胸に夜は静かにふけていく

そして、戦いの鐘が静かに鳴り響く・・・

新たなる物語とともに・・・・



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