それは悲しい願いなの


  

第3章 真実、そして戦いへ




その日、クロノに呼び出され、なのは、フェイト、はやての三人はアースラの食堂へ来ていた


「さて、君たちを呼んだのは例の件に関してだ」
「何か分かったの?」
「・・まぁね」
なのはの問いにクロノは少し歯切れが悪く、言いにくいことだというのが分かった
「・・私たちは、どんなことになっても途中で逃げたりしない」
「そや、大体ここまで来てほっとけるわけないよ」
「いや、そういう意味ではないんだ、ただ・・君たちにとってやりづらい相手だろうと思ってね」
フェイトとはやての言葉にクロノはそういって一つの資料を取り出した
「アルベルトという男の資料だ。残念ながらアリッサってコのことは分からなかったが」
クロノはそういって資料を読み始めた
「アルベルトは小さいころ、というより物心ついたときに親に捨てられたらしい」
「え?」
「彼の家はそんなに大きいわけではなく、親もあまり働かなかったらしい」
「・・・・」
「で、両親は二人で生活するのが精一杯で彼を捨てた」
「ひどい・・」
「運良く孤児院の人に拾われたみたいだが、そこもあまり良い環境ではなかったらしい」
「そして、その魔法の資質と、ずば抜けた身体能力を駆られ魔導騎士養成所に入り、今に至る、と」
クロノはそういって資料を閉じた
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「で、どうする?僕としては武装隊を送り込んでしまったほうが良いと思うが・・」
クロノのその言葉になのはは静かに首を横にふった
「クロノ君、それはだめだよ」
「なぜだ?」
「・・まだ、話せるから」
クロノの問いにはフェイトが答えた
「そやな、まだ終わってない。これからや」
「・・・そうか、なら準備はできている」
「え?」
「準備、って?」
「・・まさか、初めから分かってたん?」
「これでも君たちのことは理解してるつもりだ、この程度で根を上げないこともね」
クロノはそういって肩をすくめた


その後、多少の準備をしてなのは達は再びアディットへやってきた
そして、探している人物はすぐに見つかった


「こんにちは」
「・・・また、おまえたちか」
「・・アルベルトさん、話を聞いてもらえませんか?」
「・・・・なんだ」
「・・失礼だとは思いましたが、あなたのこと少し調べさせてもらいました」
「・・まぁ、時空管理局の力なら簡単だな」
フェイトの言葉にアルベルトは驚いてはおらず、むしろ予想していたようだ
「理由はどうであっても、あなたがしようとしてることはいけないことです」
「・・・・」
「その、気持ちは分かりますが・・・・」
「・・・」
「もっと、違う形で幸せになろうって思いませんか?」
「私たちにできることなら、手伝いますから」
「・・なのはちゃん、フェイトちゃん、やめよ」
「え?」
それまで黙っていたはやてが口を開いた
「違う、きっとうちらの考えは間違ってるわ」
「間違ってるって?」
「彼が持っていないって事?」
「そやない、彼はディメンションジュエルを私利私欲で使おうとしてるんやない・・」
はやてはそこで言葉を切り彼、アルベルトの目を見てはっきりと告げた
「アリッサちゃんのため、・・違うか?」
「・・・・・」
「え?」
「騎士、やもんな、自分のことより主のことを考えるんは当然や」
そういってはやてはリインフォースを起動させる
「んで、妨げになるもんは排除する・・・違うか?」
「・・そうだったな、君にも騎士たちがいたのだった」
アルベルトはそう言うと手を空にかざした
「ヴリュンヒルデ」


「・・ねぇ、やっぱりやるしかないの?はやてちゃん」
「仕方ないやろ、そうでもしないと止まらへんよ」
「でも・・・」
はやてと違い、なのはとフェイトはためらっている
そしてそれを見たアルベルトは提案する
「なんなら、三人同時でもかまわんぞ」
「ええんか?うちらAAAクラスやで」
「ふん、結局は経験がものを言うんだ」
そういってアルベルトはヴリュンヒルデを構えた
「・・やっぱり、だめだよ」
「なのは・・・」
なのははそういってレイジングハートをおろす

なのはのためらう理由、もちろんアリッサのことだ
見ていないとはいえ、アレだけ彼のことを信頼しているのだ
その彼が傷ついたとなれば絶対悲しむ

「・・・せやったら、うちだけでやる」
「はやてちゃん・・・」
「はやて・・・」
そういって、はやてはなのはとフェイトから離れた

「・・いいのか?たとえAAAクラスでも俺は簡単には倒れんぞ」
「元から承知の上や、あのときの借りも返さんとな」
「・・・よかろう」
こうして、戦いは始まった


「リインフォース」
『はい、マイスターはやて』
その言葉と同時にはやての周りに光の柱が立ち上った
「闇を払う光、シャイニングトーン」
その言葉とともに光の柱は槍のような形状になった
「撃ちぬけ!」
「?!」

ドカァァァァン

「・・・どや、リインフォース」
『・・駄目です、止められました』
「全部か?」
『はい・・』
リインフォースの言葉を肯定するかのように煙の向こうから現れたアルベルトは無傷だった
「なるほど、さすがに四人の騎士を従えるだけはある」
「無傷でいわれてもな・・」
「ふ・・・では、こんどはこちらからだ・・」
アルベルトはそう言うと手をかざした
「天の恵み、天の厄災、その力を持ってすべてを焼き払え」
「これは・・・」
「・・雷の嵐、サンダーストーム」
「?!」
轟音とともにはやてに向かって幾筋もの光の帯が降り注いだ


「・・む?」
轟音がやみ、視界が開けるとそこには・・・・
「大丈夫?はやてちゃん」
「うん、ありがとな」
障壁をはって攻撃を防いだなのはとフェイトがいた
「・・どうやら、やるしかないみたいだね、なのは」
「うん、友達を傷つけるなら・・・私は」
なのははそういってレイジングハートを掲げた
「許さないから!いくよ、レイジングハート」
『All right My master』
「バルディッシュ、準備はいい?」
『Yes sir』
「レディ・・」
「「ゴー!」」
掛け声とともになのはとフェイトは二手に分かれた
「・・ほぉ、連携戦か」
「いっとくけど、遠慮なしだからね」
「面白い、二人がかりでどれほどできるか見せてもらおう!」
そういってアルベルトはなのはに向かっていった


「でっかいのいくよ、レイジングハート」
『Shooting mode』
「ディバイン・・・・バスター!」
その言葉とともにアルベルトへ向かって一筋の光の帯が流れた
「甘いな、そんな直線的なもの・・・?!」
しかし、アルベルトは身動きをとることができなかった
「バインド?!いつの間に」
「伊達に管理局の仕事をしてるわけじゃないよ」
「ぬ・・?!」
その言葉と同時に光の帯はアルベルトを包み込んだ


「・・・ちょっと、やりすぎちゃったかな?」
『No problem』
「・・・・驚きだ、まさかここまでとはな」
「?!」
声に驚き振り向くと・・・
「あと少し解くのが遅れていたら、直撃だったな」
そこにはバインドで拘束されていたはずのアルベルトが立っていた
「く・・」
「遅い!」
「あぅ・・」
とっさに逃げようと後ろに跳んだなのはの腹にアルベルトの蹴りが決まり、軽く20mくらい飛ばされた

「うぅ・・」
「目の付け所は良い、だがバインドでは不十分だ」
アルベルトはそう言うと後ろを振り向き手を横に凪いだ
「?!」
「フェイトちゃん?!」
「タクティカルバインド。三重に相手を拘束することができる」
「く・・」
「なるほどな、片方が囮、そしてタイミングを計り後ろからもう片方が、と、息があっているな」
アルベルトはそう言うとフェイトの首をつかんだ
「あ・・ぐっ・・・」
「フェイトちゃん!?」
「よくやった、と褒めてやりたいところだが、この程度ではな・・・」
「うっ・・く・・」
フェイトは何とかバインドを解き、逃げようともがくが
バインドは頑丈でそう簡単には解けそうもない
「・・・なぜ、そこまで頑張る?お前たちには関係のないことだろう」
「う・・だけど・・・だから放っておくなんて・・できない」
「・・・・」

「そうや、こんなことで諦めるほどうちらは弱ないで!」
「ぐ・・」
そういって飛んできたはやての蹴りがアルベルトに決まった
「けほっ・・はぁ・・はぁ・・」
「フェイトちゃん、大丈夫か?」
「う、うん、ありがとうはやて」
「・・・どうやら、少し見くびっていたようだな」
アルベルトの言葉に三人はこう告げた

「高町なのは、時空管理局戦技教導官兼捜査官」
「フェイト・T・ハラオウン、時空管理局執務官」
「八神はやて、時空管理局特別捜査官」

そして、なのはは静かに口を開く

「あなたを第一級遺失物、別名ロストロギア所持の容疑で逮捕します」


  

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