それは悲しい願いなの


  

第4章 大切なもの




「やはり、始まったな」
「で、どうするの?クロノくん」
「どうするもこうするも、彼女たちに任せるしかないよ」
クロノはそういってモニターのなのは達を見た



「シュート!」
その声と同時に無数の光の弾がアルベルトに向かって放たれる
「あまい!」
しかしアルベルトが起こした風のようなものにすべて消え去った

「フェイトちゃん!」
「む?!」
「・・サンダー・・レイジ!」
しかし、予想していたのか詠唱を終えたフェイトが頭上からお得意の雷魔法を放った

ドカァァァァァン

「やった?」
「・・だといいけど」
そして、煙が晴れた先には・・・・
「・・・AAAクラスも伊達ではないということか」
多少の傷は負っているもののぴんぴんしているアルベルトが立っていた
「無傷じゃないみたいだね」
「うん、とりあえず効いてるみたい」
「さて、それじゃ一気にたたみこむで」
はやてはそう言うとなのはとフェイトに耳打ちをした
「・・うん」
「少し、危険な気もするけど」
「それくらいせな、倒れてくれへんよ」
そして、三人はうなずきあい、それを合図にしたかのようにアルベルトが三人に向かってきた

「・・さて、そろそかな」
「?クロノくん、何か用事でもあった?」
「いや、彼女たちがそろそろ来るなと」
クロノのその言葉と同時に後ろからドアの開く音がした
そして、そこにいたのは・・・

「君たちはまだ治療中のずだが?ジグナム」
「・・あの程度一日休めば治る」
「はやてが戦ってんだ、あたしたちも行く!」
「・・・残念だが、許可できない」
「・・なぜだ、そちらとしてもアレは回収すべきものだろう?」
「だったら大勢のほうが効率いいじゃねぇか」
「そうですよ、それに私がいれば傷を癒せますし」
「・・俺のようなものがいれば盾にもなる」
クロノの言葉にシグナム達はそう提案した。しかし・・・
「そうじゃない、僕では無理なんだ」
「・・どういう意味だ?」
「君たちは時空管理局の預かりになっているが、所属ははやての守護騎士、つまりははやての部下ということになっている」
「そして、そういうことになると所属外、つまり関係のない僕がそういったことを許可することはできないんだ」
「んじゃ、はやてはどうなんだよ」
クロノの説明にヴィータが不満そうにそう問いかけた
「彼女の場合は捜査官だからある程度の権限はあるし、何より彼女自身が志願したからね」
「だから、君たちが動くためにははやての許可、もしくは上司、それ以上の権限を持った人に許可してもらわないと」
と、そこでドアのほうから聞きなれた声が聞こえた
「んじゃ、私たちから要請しよう」
「正確にはとうさまからだけどね」
そう声のしたほうを向くと、そこにはアリアとロッテが立っていた



「リインフォース、あとどれくらいや?」
『おおよそ2分です』
「・・んじゃ、一発でかいのいっとくか」
「なにを考えているか知らんが、余所見は禁物だぞ」
「え?・・きゃ・・」
気がつくとすぐ側までアルベルトが迫っていた
後数秒反応が遅れていたらきっと吹っ飛ばされていただろう
「少しは手加減したろて思わん?」
「そんなことをしたらこちらがやられるというのは先の戦闘で分かっている」
「それもそか・・んじゃ、こっちも本気でいくで」
はやてはそう言うとリインフォースを構えた
それとともにはやての周りに大量の魔力が渦巻きだした
「?!・・なんだ、この魔力量は」
「ゆうとくけど、これ半端じゃないからな」
「・・よかろう、受けてたつ」
そういってアルベルトは目の前に水晶のような輝きのある障壁をはった
「クリスタルプロダクト」
「・・いくで、リインフォース」
『はい、いつでも』
そしてはやての周りに渦巻いていた魔力が一つに収束していった
「ラグナロク!」
その言葉とともに一つに収束した魔力の奔流がアルベルトに向かっていった

ドカァァァァァン

「はぁ・・はぁ・・・どや・・」
そして、煙が晴れ、そこには・・・
「あんた・・・バケモンか」
「・・運がよかっただけだ」
そういったアルベルトの身体にはあちこちに切り傷のような後があった
「そか、でもこれでうちらの勝ちや」
「なに・・・?!」
はやての言葉にアルベルトは振り向いた
そこには準備万端整いましたといわんばかりに
笑顔のなのはとフェイトがいた

「・・・囮、か・・・まったくとんだ狐だな」
「お待たせしました、でっかいのいきます」
「・・N&F合体魔法」
「スターライト・・」
「プラズマザンバー・・」

「「イグニッション!」」

その言葉とともに魔力の竜巻がアルベルトを飲み込んだ



「さすがに、これは無理でしょ?」
「・・だと、思うけど」
「これで、無傷だったらほんまにバケモンやね」
三人の最強魔法を立て続けに食らったのだ
普通なら立つことなどできないくらいのダメージだろう
しかし・・・

「・・相手が倒れたことを確認するまで気を緩めるものではないぞ」
「?!」
「そんな?!」
「うそやろ?!」
三人の視線の先
つまり先ほどなのはとフェイトの魔法が直撃した場所に
しっかりとアルベルトは立っていた

「さすがに、片腕が上がらんか・・・だが、まだやれる」
そういってアルベルトは三人に向かっていった
油断していた、というより先ほどの魔法で疲れきっていたのか
三人は反応が遅れた
「あぅ・・」
「く・・」
「うぁ・・」
そして、三人は見事に吹っ飛ばされた


「うぅ・・」
「く、油断した・・」
「・・ほんまに、バケモンか」
「覚悟が違うだけだ・・・そして、経験した場数もな」
そういってアルベルトはヴリュンヒルデを掲げた
それと同時に周りに光の弾が現れた
「悪いが、しばらく動けないようにさせてもらう」
「う・・」
「く・・身体が」
「・・ゲームオーバー・・か」
「ファイエル」
その言葉と同時になのはたちに向かって光の弾が降り注いだ


しかし、その光の弾はなのはたちには届かなかった
「まったく、だらしないぞなのは」
「ヴィータちゃん?!」
「・・らしくないな、テスタロッサ」
「シグナム?!」
「主、大丈夫ですか」
「ザフィーラ?!」
「待っていてください、今癒しますから」
「シャマルまで、みんなどうしたん?」
「もちろん、主を護るためです」
「そやけど、みんなまだ傷が・・」
「心配すんな、はやて。あたしたちは頑丈にできてるから」
「・・・せっかくの良いシーンを台無しにするようで悪いが、こちらも時間がないのでな」
そういってアルベルトはヴリュンヒルデをシグナムたちに向けた

「一度負けたとはいえ、今のお前では我らには勝てん」
「いや、腕一本でも動けばお前たちになど負けん」
「じゃあ、動けないようにしちゃえばいいんだ」
声と同時にアルベルトの周りに青白い光の束が舞った
「?!これはストラグルバインド」
「本来は凶悪な現住生物とか捕獲するときに使うものだけど、それくらいじゃなきゃ止められないみたいだから」
「アリアさん?、ロッテさんまで?!」
「やっほー、みんな元気にしてた?」
「・・・えと、お二人はどうして?」
「とうさまに言われたのよ。はやてを助けてあげなさいって」
「グレアムおじさんが?」
「はやて、そんな話は後でゆっくり、まずはあいつをどうにかしねぇと」
そういってヴィータは拘束されているアルベルトへ視線を送った

「・・あいにくだが、降伏する気などはないぞ」
「この状況で、まだ抵抗するのか?」
「・・・まだ、動けるからな」
「・・では、少々手荒にいこう」
そういってシグナムはレヴァンティンを構えた
「例のやつだな」
そういってヴィータもグラーフアイゼンを構えた
「いくぞ、レヴァンティン」
『Jawohl!』
「砕け、グラーフアイゼン!」
『Explosion!』
「はずすなよ、ヴィータ」
「シグナムこそ、遅れんなよ」
「ぬ・・・」
アルベルトは逃げようともがくがアリアとロッテのバインドは強力で
そう簡単には解けそうにない

「ブレイズ・・」
「クラッシャー!!」
そして、シグナムとヴィータの声が響き、同時に炎と衝撃波の渦が
アルベルトを飲み込んだ


「・・少し、やりすぎたか」
「ちょうどいいって、それよか早く連れてこうぜ」
そういって歩き出したヴィータをなのはが止めた
「まだだよ」
「は?」
「うん、きっと・・」
「考えたないけど、二人と同じ意見や」
なのはの言葉にフェイトとはやても同意した
そして、それが間違いではないことはすぐに分かった
「・・まだ・・だ・・・まだ、やれる・・・」
「・・いったい、なにがそこまで・・」
「あいつ、人間か?」
シグナムとヴィータがそういうのも無理はない
あれだけの攻撃を受けても立っていられるのだ
もはや、人の限界は超えている


「願いを・・叶えるまでは・・・死ねんのだ」
「あなたの願いが何かは知らないけど、そのままじゃほんとに死んじゃうよ」
なのはの言葉にアルベルトは静かに答えた
「いずれは・・死ぬのだ・・・それが早いか遅いかの違いだ・・」
「だけど、死んだら願いも何も叶えられないんだよ」
フェイトの言葉にも、アルベルトは静かに答える
「俺の願い・・いや、主の願いは俺が死ぬことで・・・叶う」
「・・・それを、ほんまに望んでるんか?あのコは」
はやてのその言葉にアルベルトは逆に問い返した
「では、愛するものに抱きしめてもらえず、触れられない辛さを知っているのか?」

「?!」

「信じるものに裏切られ、捨てられ、見放される虚しさを!」

「!」

「わずかな、ほんの小さな願いも叶えることのできない無力さを!!」

「!・・・」

「そんな、当たり前の願いを叶えることが願い・・・そのためなら我が命など不要だ!!」

アルベルトの、心のそこからの言葉がその場の全員を黙らせた
誰も、何もいえない

皆、アルベルトの言葉を否定できない

しばらくの間沈黙が続いた
そして、それが破られたのはここにいるはずのない人物の声だった

「そんなこと、願ってない!」
「?!」
振り向いた先、今にも泣き出しそうな表情でこちらを見ているアリッサがいた


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